「危機感が海外移住を決意させた」――ロンドン発、世界を股にかける日本人女性デザイナー世界一周サムライバックパッカープロジェクト(2/3 ページ)

» 2012年07月17日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

――海外で働くという志向を元々お持ちでしたか?

左右田 小学6年生の時に父親を亡くしたこともあって、昔から「物事には終わりがある」と感じていました。それがあって、中学生、高校生くらいから日本の国に危機感を抱いていたので、「とにかく自立したい」「外国に行きたい」という願望が人一倍強かったです。

 もし行くのであれば、ちまちま行くよりもどーんと行きたかったのでお金を貯めていたのですが、早くも運良く結婚を機に、初めての外国行きで海外移住の夢が実現してしまいました。今から6年前、22歳の時です。

――言語以外で立ちふさがった困難は何でしたか?

左右田 物事のとらえ方の違い、立ち振る舞いや小さなことひとつひとつ。英国で生きていくことや目的、根本的な哲学の違いについて、日本で育ってきた自分自身と一度真っ正面から向き合い、一から消化し対応しなければいけなかったこと。まだまだ、いつでも困難はつきまといます。

――海外(英国)で働くこと、生活することの魅力について教えて下さい。

左右田 英国で働くことの総合的な魅力に関しては、ありとあらゆる国から人がやってくること。

 クリエイティブ業界に関して言えば、実験的なことがやりやすいこと、そしてそれを受け入れる肥えた目を持った観客がいること。

 もちろん労働時間が短いこと、ホリデーが取りやすいことも良い点として挙げられるかもしれませんが、それはそれで良い点も悪い点もあると思っています。

 生活することの魅力に関しては、世界のハブになっているので、とにかくさまざまな国に旅行がしやすいこと。さまざまな国に行きましたが、ここまで空の便が充実している国はありません。

――日本は英国から何を学べると思いますか? また、英国は日本から何を学べるとおもいますか?

左右田 外交です。外国とうまく付き合っていく方法を学ぶのは重要だと思います。英国はさすが大航海時代に栄華を誇った国だけあって、外国との付き合い方が上手いと感じます。どこの国の人もふたを開けてみると、ちゃっかりしてますから。こちらがへりくだって学ぶだけでなく、もっと世界に喧嘩を売っていくくらいがいいのではないのでしょうか。

 日本には外国にないものがたくさんあるので誇りに持ってほしいです。

――今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。

左右田 東北の復興支援として私が主催しているロンドンのデザイナーと東北の伝統工芸の工房、会社を結んだプロジェクト「Tohoku London」の初めての展示がちょうど7月15日まで、ロンドンのOxford Circus付近にある展示スペース、AsiaHouseで行われました。

 こちらのプレス、販売店等からも声がかかり、評判が上々でした。これからはこのTohoku Londonのプロジェクトをより大きくしていくこと、あと5月に ICFFNew Yorkで展示をしたDaydreamという日本の和紙を使った照明の反応が良かったので、そのプロジェクトも育てていこうと思っています。

 今年の10月からはRoyal College of Art (英国王立美術大学院)のデザインプロダクトのコースに2年間在籍する予定です。世界的に有名な研究機関の中で、実験的なプロダクトデザインのプロジェクトを行えそうなので、今から楽しみにしています。

――最後に、日本の若者にメッセージをお願いします。

左右田 私も一応20代なので人のことを言える立場ではないのですが……。海外を目指している方に向けてのメッセージとするならこのような感じでしょうか。

 世界の競争は今とてつもなく早いです。今、先進国と言われている国にいる人々が、今までのように物質的な幸せを簡単に得られる時代ではないようなので、現状のような生活のレベルを維持したい、それよりも前にいきたいのであれば、人一倍頑張るしかありません。

 こればかりは言葉だけで説明しても伝わらないと分かったので、ほかの人とは違う人生を送りたいのであれば、個人旅行、留学、ワーホリでも何でもいいので外へ出なければダメです。外に出て、ピリピリとした緊張感を感じて、それを日々の行動に移すべきだと思います。私自身はその危機感を持って世界で生き残れるよう、毎日試行錯誤をしています。

Googleのロンドンオフィス移転パーティ時に制作。折り紙で覆ったデジタルフォスブースのための照明作品「Tomomi Sayuda at kin」

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