本格的な普及期に入ると、ここ数年言われ続けてきた電子書籍の市場が今夏、一気に動き始めた。電子商取引などを手がける楽天が19日に低価格の専用端末を発売し、インターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムも近く専用端末の日本への投入を予定。紙と電子の同時出版など出版業界の取り組みも加速しているが、乱立する規格の整備や著作権者の権利保護など対処すべき課題も山積している。(山田泰弘)
「今年が本当の意味での電子書籍元年になる」。価格7980円の専用端末「kobo Touch(コボタッチ)」の発売を間近に控える楽天の三木谷浩史会長兼社長は4日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた電子出版の見本市「国際電子出版EXPO」の講演会で、力強く宣言した。
約2千人の聴衆を集めた講演会には講談社の野間省伸社長も参加。書店大手の丸善などの持ち株会社、丸善CHIホールディングスの小城武彦社長が司会を務めたこともあり、出版やIT(情報通信)業界などから注目された。
現在も紙での出版が圧倒的に多い出版業界だが、野間社長は「ほぼ全てのタイトルについて紙と電子の同時刊行をしていきたい」と、先陣を切って電子書籍の展開を強化する考えを表明。野間社長は「コミックは4千億円の市場のうち、すでに電子書籍が500億円と全体の1割を超えている」と需要増を強調し「書籍とコミックで、5年後、10年後には、2〜3割が電子書籍になる」との見通しを示した。
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