山野井氏は立て直しを命じられるが、なかなか収益があがらず2年が経過。悶々とした日々を過ごしていたところ、親会社のフェイスから「自社システムを使って、発注から決済処理、顧客データの管理や分析、受注・商品管理、倉庫からの配送などをすべて内製化してコスト削減をしないか」と打診を受ける。これでダメだったら――最後のチャンスとして動き出した山野井氏は、ビクターをこの話に引き込んでしまうことを思いつく。
「もともと同じ悩みを抱えていましたので、何か一緒にできることはないかと話し合いを続けていたんです。商品の仕入れや配送はすべて私たちがやりますから、先方にとっても悪い話ではありません」
トントン拍子で話が進む中で、さらに山野井氏にあるアイデアが浮かぶ。システムも共有するのだから、いっそのことカタログも共有すればいいのでは――。
「ふざけているんじゃないかと最初は社内でも誰もまともにとりあってくれませんでしたが、実際にやってみると、うまくいきました」
この背景には、レコード会社特有のビジネス文化がある。例えば、あるアーティストのCDボックスを作って発売する際、曲によって音源を持っているレコード会社が異なることが多々あるので、他社同士で版権のやりとりをしなくていけない。そうしてできあがったCDボックスは各社のカタログで紹介される。つまり、横断的なビジネスに慣れているのだ。
こうして2011年5月、ビクターエンタテインメントと日本コロムビアの業務提携が開始。さらに今年1月にはそこへEMIミュージック・ジャパンが加わった。競合3社が通販事業で業務提携を行うということで、大きな話題を呼んだ。
「3社ともカタログの制作費は3分の1、印刷費もおよそ1割減。固定費を大幅削減できました」
だが、どんなに節約ができても、同じカタログだったら顧客を食い合って結局、売り上げが落ちるのではないか。そんな疑問が浮かぶが、そこはきっちりとすみ分けができているという。
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