市場は悪化したけど……米国の雇用統計は本当に“悪かった”のか?ラッキーFPの“ついてる”はなし(1/2 ページ)

» 2012年07月09日 19時10分 公開
[原彰宏,Business Media 誠]
誠ブログ

 米国の景気動向を見極める上で大きく注目されていた6月の雇用統計。7月6日に発表された結果は、失業率は8.2%と変わらず、非農業部門雇用者数は前月比8万人増加、5月の速報値6万9000人増は、7万7000人増に修正されました。パートタイムを余儀なくされた人や就職をあきらめた人を含む、広義の失業率は14.9%と、こちらは前月より0.1%悪化しました。 

 これを受けて、マスコミは一斉に「米国経済の失速懸念」と報じました。多くのマスコミは、これを「弱い」「悪い」と評し、一時ドルは売られ、同日のニューヨーク株式市場ダウ平均は、終わってみれば124.20ドルも値を下げました。S&P500株価指数も週間ベースで値を下げました。

 さて、ここで、この雇用統計に関して、5月の数値は上方修正され、6月の数字も雇用者数は増えているにもかかわらず、「弱い」と評価されるのは不思議だと思いませんか? 弱いというのは、何に対して弱かったのでしょうか。

 それは、市場予想の数字に対してなのでしょう。

 市場予想の数字は9万5000人増でした。今回の雇用統計の数字は、事前から「あまり良くないのでは」と懸念されていました。ところが、予想数字は9万人前後と直前で跳ね上がり、ある証券会社は14万人増という数字を発表していたくらいです。これは何を意味するのでしょうか。

 前日に発表されたADP雇用統計では、10万人増の予想に対して17万6000人増と、強いものでした。ADPは給与所得者の給与明細を計算作成する民間会社です。かつて、ADPと商務省の数字はリンクしている時期もありました。しかし、ここのところ、必ずしも同じ動きをしているわけではありません。ADPは良くても、政府発表の数字が悪いことがよくあるのです。

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