振り込め詐欺にひっかかる奈良県民、なぜ?(2/4 ページ)

» 2012年07月05日 19時24分 公開
[産経新聞]

被害者の体験談

 一方で県警は、自宅にかかってきた不審電話を振り込め詐欺と見抜いた詐欺未遂被害者の主婦に依頼し、県内の警察署で記者会見を開催した。主婦は報道陣の取材に対し、事件当時の心境や電話でのやりとりを詳細に語った。

 主婦によると、自宅に息子を装う男から電話がかかってきたのは、くしくも県が多発警報を発令した5月9日午後。相手の男はせき込んだ声で息子を名乗り「携帯電話の番号が変わった」と伝えるなど、“一般的”な詐欺の手口を使った。

 主婦は新聞などを通じてこの手口を知っていたといい、別人からの電話だと気付いた。それでも話をする内に「本当に息子なのでは」と気持ちが揺れ動き、「のどが痛ければ湿布を貼ればいいよ」と話しかけると、男は「貼っていいの」と驚いた反応を見せたという。

 主婦は子供のころから息子が風邪をひいてのどを痛めると、いつも湿布を貼っていた。この家族にしか分からない思い出をきっかけに、男が息子とは別人であることを確信した。

 電話の後、夫に相談して息子の自宅に電話をかけると、やはり振り込め詐欺だったことがわかり、近くの警察署に通報。それでも翌10日、再び息子を名乗る男から「女性を妊娠させてしまった」と電話があったという。

 主婦の息子は有名進学校の東大寺学園高校(奈良市)OBで、現在は東京の会社に勤務。年2回ほどの帰省以外はあまり連絡をとっていなかった。

 主婦は県警に、男からの電話が詐欺だとわかっていながらも、朝目覚めると「息子の体調は大丈夫なのか」とつい気にかけてしまうことを告白。会見では「離れて暮らす息子のことはいつでも心配。そちらの方に気がいってしまった」と親心をのぞかせた。

振り込め詐欺の手口や被害防止策などを呼び掛ける奈良県警の啓発チラシ

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