なぜ映像が浮かび上がるの? 近未来のカーナビが登場した仕事をしたら“未来”が見えてきた(前編)(3/5 ページ)

» 2012年07月04日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

目を動かす、ピントを合わせる時間

土肥:パイオニアでは北里大学と共同で、HUDは本当に安全なのか? 実証実験を行ったそうですね。今回のインタビューでは実験をされた北里大学の魚里教授と川守田講師にお越しいただきました。

 早速ですが、魚里先生。どのような実験をされたのでしょうか?

魚里:カーナビを見ようとすれば、運転中に目線を動かさなければいけません。ただ単に動かすのではなく、運転中は遠くを見ていて、カーナビを見ようとすれば近くを見る。遠くのモノから近くのモノを見ようとすれば、目はピントを合わさなければいけません。

 そこでHUDでナビ情報を見る場合、何メートル先が最適なのか、検証しました。

土肥:具体的な実験は川守田さんも携われたようですが、詳しく教えていただけますか?

川守田:はい。結論から言えば、1メートル先であればピント合わせの負担が極端に少なくなることが分かりました。なぜピント合わせの負担が少ないほうがいいかというと、そのぶん時間のロスが少なくなるからです。

 ドライバーは走行中にどこを見ているのか。カーナビを搭載したクルマという設定で、人間の目の動きを追いかける調査をしました。運転をしていて一般的なカーナビを見ようとした場合、目線移動に1.1秒かかりました。これに対し、HUDの場合は0.5秒。なぜ半減したかというと「目を動かす時間」「ピントを合わせる時間」――この2つが短くなったためですね。

土肥:でも、従来のカーナビは1メートル以内に設置しているクルマが多いですよね。ということは「危険」ということでしょうか?

川守田:そういうわけではありません。視線を動かす時間が1.1秒かかるので「危険」というわけではなく、HUDを使って運転した場合はより視線の移動時間が少なくなるということです。

 HUDはドライバー席から3メートル先にナビ情報が映し出されるように設定されていますが、例えば90センチ先でも問題はありません。でも、それだと「既存のカーナビと同じ条件になってしまう」ということですね。

土肥:なるほど。

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