Metro、Surface……マイクロソフトは本気でタブレットに取り組もうとしているのか?遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/3 ページ)

» 2012年07月03日 12時20分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]

タイル型ユーザーインタフェース「Metro」

 マイクロソフトは、過去15年にわたって、Windowsの操作方法については必ずしも満足していたわけではなかった。それでも、バージョンアップしてもほとんど変り映えしなかったのは、それがベストではないにせよ使えないものではなかったからだろう。それに対してMetroは、時代の変化に応えて、操作体系に大きな変化を初めて与えるものだといえる。その使い勝手の詳細はニュース記事などに譲るが、評判は(少なくともWindows Phoneに関しては)悪くはないらしい。

 かつては、キーボードを使って文字を書かないと何も始まらなかった。あて先、題名、本文……キーボードからその都度考えながら入力する必要があった。それが今では、たとえばFacebookや企業向けのソーシャルメディアを使って、それまでの文脈の上での簡単なやりとりで済ませることができるようになってきている。

 仕事でコンピュータを使う場合でも、いつも前のめりになってソフトウェアと格闘しているわけではない。いまはむしろ、人と人のコラボレーションの部分でのギャップを埋めるほうが、企業やグループの生産性に対しては効果的だと考えられている。マイクロソフトの「Office 365」は、ワープロや表計算ではなくコラボレーションツールが中心だし、先日も同社は「yammer」という企業向けSNSを、12億ドル(約950億円)という巨額で買収したばかりだ(参照記事)

 そういった利用に関しては、Surfaceは、いかにも都合がよさそうな端末に仕上がっている。実際のところ、「これなら自分も欲しい」という人が、わたしの周りには何人もいる(まだ価格もバッテリー駆動時間も明らかになっていないのだが)。しかし、このSurface、同社のタブレット戦略がこれだとすると、少し疑問がある。

マイクロソフトの戦略

 下の図は、いまコンピュータの世界で「4スクリーン」と呼ばれるマルチデバイス時代のパワーバランスを、主要企業の点取り表のようにしたものだ。丸く塗りつぶした部分が大きいほど、その領域で売り上げが大きいとか、存在感があることを意味している(具体的な数値からではなく、主観で捉えたものである点をご了承いただきたい)。

4スクリーン+1クラウド時代のマトリクス

 これを見ると、どの企業もいま、自社がまだ手を付けられていない部分に注力していることが分かる。グーグルやアップルなら「テレビ」、ソニーなら「クラウド」をなんとかしようと頑張っている(図の中で塗りつぶしていない丸い部分がそれだ)。そして、マイクロソフトが遅れをとっていて、いま必死で取り組んでいるのは、「スマートフォン」と「タブレット」の部分だ。テレビも手を付けていないのだが、隣接分野である家庭用ゲーム機「Xbox 360」が好調である。

 マイクロソフトはこの中で、スマートフォンについては携帯電話の巨人ノキアと組むことで、なんとか動き出している。「Surface」発表の4日後の6月20日に、同社はスマートフォンのプラットフォームの新バージョン「Windows Phone 8」を披露した(参照記事)。米国のアナリストの分析では、将来的には「Windows Phone」が、アップルのiOSやグーグルのAndroidを一蹴して市場をリードするという見方もあるほどだ。

 ところが、タブレットは「Windows 8」と「Windows RT」にまかせた格好になっている。同社は、従来型のWindowsソフトウェアの世界を維持しながら、タブレットの世界にコマを進めたということなのだろう。よく言えばそうなのだが、逆の言い方をすれば「相変わらずのPC」の領域を出ていない。それでいて、インテルとの蜜月期の終焉と言うべきARM版のWindows RTを投入してきているのではあるが(参照記事)

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