「影響の与え方の変化」について、もう少し具体的に、その中身を分解してみよう。僕は、以下の3つが主な要素になるんじゃないかと思っている。
1.「影響力のベクトル」が変わった
2.「影響力の範囲」が変わった
3.「影響力のスピード」が変わった
まず、「影響力のベクトル」。これは、影響力が行使される方向性が、これまでの一方通行から「双方向」に変化したという意味だ。だから、単純にベクトルが入れ替わったというより、いくつかのベクトルが同時に存在するようになってきたということ。ちょっとわかりにくいかもしれないけれど、実はこれがとても大事なポイントだと思う。従来は、影響を与えたい、影響を発揮したい主体(企業や組織、特定の個人)がまずあって、その主体の意図によって、トップダウンで影響力が行使されていた。これは今も変わらない側面はあるけれど、同時に、ソーシャルメディアなどコミュニケーション環境の発達によって、「ボトムアップの影響力」が台頭してきた。
次に、「影響力の範囲」の変化だ。まず、これまでよりも高効率に、広い範囲に影響を及ぼすことができるようになった。今や世界中の人たちが、国境を越えて互いにつながり合っている。共感を呼ぶストーリー、人に伝えたくなるような情報は、やがて「自走」し始める。そんなダイナミックな環境が生まれようとしている。けれど同時に、ネットの進化はいわゆる情報洪水を引き起こした。情報が容易に世界中をかけまわるようになった一方で、スルーされてしまう情報も増えたわけだ。情報が溢れているから、これまでよりも「自分に関係があるかどうか」という視点がいっそう大事になった。つまり、広い範囲に網をかけたからといって、イコールその範囲に影響を及ぼせるとは限らない――「影響範囲」の考え方が、ちょっとだけ複雑化したのだ。
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