ただいま“海図なき航海中”……日本人が注意すべきこと藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年07月02日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

中央銀行にできること

今の状態は「海図なき航海」。日本人は何に気をつければいいのか

 最新の英エコノミスト誌は、この問題について、「手を引くな、中央銀行」と題する記事を書いた(参照リンク)。要するに、中央銀行にはもっとできることがある、という主張だ。

 一部の経済学者は、現在、中央銀行が市中の国債を買って銀行に資金を供給するだけでは十分ではないと主張する。例えば社債なども購入するとか買い入れ資産を多様化したり、あるいはインフレターゲットを導入して消費を促進するなどの手段を講じるべきというのである。

 これに対して中央銀行マンたちは、より慎重な姿勢をとる。すでに大量の国債を市中から買い上げていて、それが経済に歪みをもたらしている。先月末に開かれたEUサミットで、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁も、ECBは政治家の尻ぬぐいはすべきではないし、するつもりもないことを明言した。

 このどちらが正しいのか。エコノミスト誌は金融超緩和のリスクは否定しないが、それは「なんとかなる(manageable)」と主張する。中央銀行の国債の買い入れでバランスシートが膨らんでも、それは必ずしも近い将来のインフレを意味するわけでもないとする。

 ただ、気をつけなければならないことは、人類の歴史でこれほどの金融緩和が続いたことはないということだ。言ってみれば、この状態は「海図なき航海」なのである。そしてわれわれ日本人がもっと気をつけていなければならないのは、この先進国の海図なき航海で先頭を切っているのが日本であるということだ。行き手に氷山があるのか、岩礁があるのか分からない海で、日本が手探りで進んでいるのである。

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