コラム
» 2012年07月02日 07時59分 UPDATE

藤田正美の時事日想:ただいま“海図なき航海中”……日本人が注意すべきこと (1/3)

ゼロ金利政策が終わらない――。人類が経験したことがない、いわば異常とも言えるこの状況に対し、日本人はどのように対応すればいいのだろうか。不安の種は尽きない。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 「増税一直線」首相と呼ばれるのは心外だという野田佳彦首相。とはいっても、社会保障の改革も経済成長も「やり抜かねばならない」と絶叫してみても、具体的に何をやるかが見えてこないから迫力がない。実際、民主党のマニフェストで高らかにうたった「最低保障年金の創設」や「高齢者医療制度の廃止」は、国民会議の議論に委ねられることになったが、ほぼ放棄されることになるだろう。

 このまま行くと、増税の上に社会保障の給付引き下げが待っている。この景気の状態で財政再建を果たそうと思えば、増税だけでも歳出削減だけでも足りず、両方をいっぺんにやらなければならないからだ。そして歳出削減で無駄を削るほかに必要なのは、社会保障の給付引き下げである。それも団塊の世代が70歳になる前に片付けなくてはならない。

経済成長が見込めない

 増税と社会保障の引き下げを同時にやるなどということは政治的には自殺行為だが、経済成長が見込めない以上はしかたがない。どうやれば日本経済は数%の経済成長を見込めるのか。この問題の答はここ20年見つかっていない。政府は財政による景気刺激を繰り返し、その結果、膨大な政府債務を抱えるに至った。そしてとうとう大幅な増税を打ち出さざるをえなくなった。

 一方、日本銀行はゼロ金利、量的緩和をずっと続けている。しかしその効果は上がっていない。日本銀行の白川方明総裁は、バランスシート調整をしているときは金融調整によって投資や消費を導くことは難しいと講演で語った。

 バランスシート調整とは、バブルで膨らんだ債務を返済して企業など(家計も同様だが)がバランスシートを「再建」することを言う。要するに、借金返済による財務体質の改善ということだ(個々の企業や消費者にとっては当然の選択ではあるが、マクロ的に見るとこれが投資や消費を抑え、経済の停滞につながっている)。

 その結果、日本経済は需給ギャップがなかなか埋まらず、価格に下方圧力が加わってデフレ状態から脱却できない。そして今、世界経済(とりわけ先進国経済)も同じような道を歩もうとしているかのように見える。ギリシャなどの債務危機にあえぐユーロ圏の問題は(関連記事)、根本的には南欧を中心とする経済停滞、そして金融を緩めても効果がないという状況が事態をより悪くしている。

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