スカイマーク・サービスコンセプトの中には、例えばこんな項目があります。
お客さんが事前期待として「客室乗務員に荷物の収納を手伝ってもらえることは当然」と思っている場合、LCCのサービスレベルと比較すると、その事前期待は大きすぎる(実績として期待に応えられない)ということになります。そこでこの項目を表記することで、「客室乗務員が手伝ってくれることは当然ではないんだ」という内容に事前期待をマネジメントしようとしています。
また、こんな項目もあります。
これはお客さんが、言葉使いや服装について、「きっちりと統一されているべき」という事前期待を持っているのを、「多少のバラつきが生じるんだ」と認識していただけるよう、事前期待をマネジメントしようとしています。
このようにほかのサービスにおいても、必要以上にふくらみ過ぎた事前期待を適切な大きさにマネジメントすることで、お客さんの不満やクレームを避け、サービスに満足していただきやすくする工夫ができるかもしれません。ただし、事前期待を小さくし過ぎてしまうと、そもそも利用する気になっていただけないということになりますので、事前期待は適切な大きさにマネジメントすることがポイントになります。
日本人はサービスに関してぜいたくになり過ぎているという声もあります。今回のLCCの苦悩から、そんな一面が垣間見えたような気がします。
しかし、だからと言って「LCCは安いからサービスレベルは低くて良い」ということになるのでしょうか? LCCのビジネスモデル成功のカギは、「いかに安定的な利用者数を確保するか」「いかに付加サービスを販売できるか」だと言われています。そのためには、リピーターを獲得するためにお客さんに大満足いただくことや、お客さんに快く付加サービスを購入していただくためにサービス品質を高めることが必要になってくるのではないかと思います。
今後、日本の航空業界での競争が激化する中で、LCCも価格ではなくサービス品質で差別化をする必要性が出てくるかもしれません。その際には、米国を代表するLCCのジェットブルー航空のような「ローコストとグッドサービスは両立する」というサービスに転換できるかどうかも、今後の課題になってくるかもしれません。(松井拓己)
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