事前期待を上回るサービスが大事だけど……スカイマークの苦悩から学べること(2/3 ページ)

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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お客さんに満足いただくために注目すべきは「事前期待」

 顧客満足の定義を理解することで分かるのは、「いかにお客さんに喜んでもらうか?」という視点での努力は、少しポイントが外れているということです。

 サービスサイエンスでは顧客満足は「お客さんがサービスを利用する前に抱いている事前期待を、利用後の実績評価が上回れば満足していただける」と定義しています。

 つまり、顧客満足というのは絶対値ではなく、事前期待と実績評価の相対値であるということです。この定義からすると、「いかにお客さんに喜んでもらうか?」という視点は、いかに実績評価を大きくするかだけに着目していて、事前期待という視点が抜けてしまっているということが分かります。事前期待を知らずして顧客満足は得られないので、まずはお客さんがどんな事前期待を抱いているのか、それを把握することが重要です。

 この事前期待に対しては、2つのアクションが考えられます。1つ目は、お客さんの事前期待を把握して、それに応える。2つ目は、お客さんの事前期待を把握して、事前期待をマネジメントする。

 どちらも極めて重要ですが、LCCが特に苦悩しているのは、「ふくらみ過ぎた事前期待を妥当なものに冷やす」という方向での「事前期待のマネジメント」だと思います。

ふくらみ過ぎた事前期待をマネジメントする。

 「事前期待のマネジメント」という言葉は聞き慣れない方も多いかと思います。事前期待はふくらみやすいという厄介な特徴を持っています。そこで顧客満足を得ようと、ふくらんだ事前期待に応えるためにサービスを磨き上げることももちろん大切なのですが、ふくらみ続ける事前期待に応え続けることは困難です。そこで、事前期待を適正な大きさにコントロールするための「事前期待のマネジメント」が注目されているというわけです。これは、お客さんの事前期待が実際のサービスレベルに比べて大きくふくらみ過ぎている場合において、有効な考え方になると思います。

 具体的なアクションはサービスの内容によってさまざまですが、ふくらみ過ぎた事前期待を妥当なものに冷やすという方向での「事前期待のマネジメント」の参考として、スカイマーク・サービスコンセプトの中身を見てみたいと思います。

※スカイマーク・サービスコンセプトは、内容には色々と問題はあったようですが、事前期待のマネジメントを試みた事例としてとらえると参考になるのではないかと思います。

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