事前期待を上回るサービスが大事だけど……スカイマークの苦悩から学べること(1/3 ページ)

» 2012年06月29日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松井拓己(まつい・たくみ)

ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。


 日本のLCC元年の今年、3月にPeach(ピーチ・アビエーション)が、7月、8月にはジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンが就航開始となり、LCCへの注目度は高まる一方です。

 そんな中、「このレベルのサービスまでしか提供できません」という内容のスカイマーク・サービスコンセプトが波紋を呼んでいます。そこで今回は、スカイマーク・サービスコンセプトから垣間見えるLCCの苦悩から、「サービスの視点で学ぶべきことは何か」について考えてみたいと思います。

サービスへの期待と実情とのギャップ

 LCCでは料金を安価に抑えるために、さまざまなコスト削減の工夫がされています。例えば、サービスは絞り込んで単純化して、そのほかのサービスをなくしたり有料化したりしています。また、機内の座席数を多くするために座席が狭くなっているなど、ここで紹介しきれないほどたくさんあります。その工夫の積み重ねの結果、コストは一般的な航空サービスの半分程度に抑えられているようです。

 すると当然ながら、一般的な航空サービスでは当たり前のサービスがLCCでは受けられないというギャップが生じます。具体的には、こんな状況が想定されます。お客さんはLCCに対しても、一般的な航空サービスが提供するようなハイレベルなサービスを期待してしまっている。しかしLCCではコスト構造上、そこまでハイレベルなサービスは提供できない。その結果、利用いただいたお客さんにガッカリされてしまったり、クレームをいただいてしまい、お客さんを失ってしまう恐れがある。

 この「サービスへのお客さんの期待と実情とのギャップ」、これをいかに埋めるかがLCCの大きな課題の1つなのではないでしょうか。そこで一般的に行われるのが「サービスレベルを上げる」ということですが、LCCの場合はそこに時間やコストがあまりかけられない、というのが難点です。そこで先述したスカイマーク・サービスコンセプトは、事前にお客さんに情報提供することでサービスレベルについて理解・納得いただくことを狙って搭載されたのではないかと思います。

 ここから、サービスにおいて学ぶべき点は、お客さんに満足していただくために「事前期待をマネジメントする」ということです。それでは、なぜ事前期待に注目するのか? 事前期待のマネジメントとは何なのか? サービスサイエンスの視点で順に見ていきたいと思います。

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