コラム
» 2012年06月22日 08時00分 UPDATE

「上司不在の職場」について考える (1/2)

米国では「ボスなんかいらない!」という職場が増えており、「中間管理職の絶滅」なんてことも言われ始めている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事に触発され、その意図するところを考察する。

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。


 先日、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「Who's the Boss? There Isn't One(上司不在の職場にようこそ)」という記事に目を引かれた。

 同記事には、上司不在のあらゆる職場の例が挙げられている。例えば、ワシントン州を本拠とするバルブ(Valve)社というゲーム開発会社の例。バルブは少し前、その奇抜かつユーモアたっぷりな新入社員ハンドブックがWebに流出し、米国では大いに話題になった。

 そのハンドブックの中でも述べられているように、バルブでは「上司不在の職場」ということを非常に強調している。バルブでは、社員の日常業務を監督/管理する従来的な意味での中間管理者という役職はなく、社員は自らプロジェクトを選ぶ。会社の価値観として機動性が重んじられ、その象徴としてワーク・デスクにはすべて車輪がついている。固定の配属部門・部署というものがないので、社員はプロジェクトが変わるたびに新しいチームに机ごと移動するのだ。

 固定の配属部門・部署を持たない企業組織はバルブのほかにも事例がある。社員が自らプロジェクトを選ぶ会社というのも昨今ではちらほら耳に入ってくるようになった。「上司不在の職場」とは衝撃的な言葉だが、多少関連性があると思われるものとして、「民主的な企業」などといった言葉も出現してきている。それらがいったい何を意味するのかを今回は考えてみたい。

中央集権型から現場分散型へ

 まず、個人的には上司不在の職場というのは、上司がいない職場という文字通りの意味ではなく、「権限の所在が『上司』と呼ばれる一部の人たちにあるのではなく、大多数の『社員』たちに分散されている職場」という意味ではないかと思っている。

 「民主的な職場の推進」を旗印に、「世界で最も民主的な企業」の認定を2007年から行っているワールドブルー社では、民主的な企業の原則として「社員に意義ある選択肢を与える」「権限の分散が公正かつ適正に行われている」などを挙げている。

 例えば、先述のバルブの例をもう1つ挙げると、バルブでは昇給は上司や人事が決めるのではなく、同僚によるランキングに基づいて決められる。これは、社員の価値査定の権限がチーム(同僚)に分散されているという考え方である。

 採用や解雇も同様。これはバルブばかりではなく、ネット通販のザッポス社や、環境に配慮したハイエンドなホーム・ケア用品の開発・製造を手がけるメソッド社、店舗小売業では世界最大のナチュラル・オーガニック・スーパー、ホール・フーズ・マーケット社も実践している。チームが人選のフィルターとなるホール・フーズ・マーケットの例は先日の記事にも書いた。

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