コラム
» 2012年06月21日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:烏賀陽弘道氏の写真が伝える、飯舘村の1年 (1/4)

元朝日新聞の記者で、現在はフリーランスとして活躍する烏賀陽弘道氏が写真集を刊行した。東電の福島第一原発事故を鋭く追及し続ける烏賀陽氏は、なぜ写真集を出したのか。写真が持つ力を、本書を通じて感じてほしい。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 東日本大震災が発生してから1年3カ月以上が経過した。この間、多くの震災関連書籍が刊行され、当欄でも優れた作品を複数紹介した。今回は、ベテランのジャーナリストが記した写真集を取り上げる。題材は福島県の飯舘村。政府の無策により、多くの村民と浜通りからの避難民が被曝した村だ。著者は東電の福島第一原発事故を鋭く追及し続ける烏賀陽弘道氏(関連記事)。なぜペン、すなわち記事を書く専門家であるジャーナリストが写真集を出したのか。写真が持つ力を、本書を通じて感じてほしい。

写真が持つ力

 本題に入る前に、しばらく私の話に付き合っていただきたい。

 今年5月、私は岩手県盛岡市の書店のお招きで講演に赴いた。駅を出てこの書店に着いた途端、店先のご婦人の姿が目に入った。

 この書店では、大震災関連の書籍や写真集が店先の一番目立つ場所に常設されている。私が目にしたご婦人は、『平成の三陸大津波〜東日本大震災岩手の記録』(岩手日報社)を手に取っていた。

 私が震災棚の前で書店スタッフを待つ間、写真集を持つご婦人の手が震え始めた。ページを繰りながら、彼女は大粒の涙を流し始めたのだ。

 このとき傍らにいたマネージャーが驚き、肘で私の横っ腹を突ついた。私は小声でマネージャーに耳打ちした。

 「この棚の前ではこの光景が当たり前なんだ」

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