コラム
» 2012年06月19日 08時00分 UPDATE

ビジネスマナー研修なんて、やっても意味がない会社とは

新入社員の入社からもうすぐ3カ月。新人からも人事からもビジネスマナー研修の内容がなかなか実践できないという声が挙がっている会社も少なくないだろうが、その背景には2つの原因が考えられると筆者は言う。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 新入社員の入社から、もうすぐ3カ月が経過する。毎年この時期になると、人事からも新入社員からも「研修で学んだビジネスマナーが、なかなか実践できない」という声が出てくる。名刺、電話、言葉遣い、席次、身だしなみ、その他の接遇に関することを学んだものの、現実の場面では戸惑うことや、どうすべきか分からないことが少なからず出てくるようだ。こうなる原因は2つ考えられる。

 1つは、言動が「他者への敬意」に基づいていないこと。新人について言えば、親や先生や先輩に厳しくしつけられた経験がなく、友達のような関係を続けてきている人は、敬いの気持ちを形に表す術というものを知らない。ビジネスマナーとは、どうすればリスペクトが伝わるかというノウハウである。

 だから、他者に対するリスペクトが染み付いた人には、マナー研修で学ぶひとつひとつがいとも簡単に理解できるし、学ばなかった場面が現実に起こっても応用がきく。ところが、それがない人には、マナーを慣習やルールとしか理解できないから、想定外のことが起こるとどうしたらいいか分からなくなる。

 忘れてはならないのは、会社や組織に相互にリスペクトする雰囲気がない場合も、同じようになることである。例えば、成績の上がらない年配社員や、上手に組織運営ができないベテラン管理職をバカにするような組織風土があると、それが新入社員にもすぐに伝染し、ビジネスマナーというリスペクトを伝えるノウハウをないがしろにするようになる。年配やベテランの過去の貢献を敬う、要領の悪い仕事仲間にもその強みに焦点を当てるようにする、うるさい顧客に対してもその取引に感謝する、そういうことができない組織では、新人にビジネスマナーを教えても無駄である。

 2つ目は「気働き」がないこと。新人について言えば、多様な人たちと触れ合った経験がなく、気の合う仲間たちだけで過ごしてきた人は、目にする状況、耳にする言葉からあれこれと想像する力が弱いため、先回りした行動がとれない。ビジネスマナーとは、どうすれば気働きが伝わるかというノウハウである。

 だから、他者に対する気働きが習慣化されている人には、マナー研修でやる内容はごく自然な振る舞いだと感じる。現実に起こったことにも、考えて対応することができる。ところが、気働きができない新人にとってはまったく逆で、気の利いた行動を「余計なことではないか」「出過ぎたマネではないか」「もし違ったら逆効果ではないか」と恐れてしまう。

 忘れてはならないのは、会社や組織に気働きのない鈍い人が多ければ、同じ結果になってしまうことである。例えば、関係者の関心や心配に気付かず報告や相談なく行動する、会議に遅れたり締め切りを守れなかったりしても平気である、周囲の感じ方や見え方を意識していないような言動をする、職場の仲間に対する関心が低く、思いやりに欠ける、といった組織風土では、新入社員も気働きの力がどんどん低下していく。目配りができ、想像や洞察を巡らして、率先して行動することを価値と認めないような組織では、ビジネスマナー研修は無意味だ。

 ビジネスマナーとは、敬いの気持ちと気働きを、他者に伝えるためのノウハウである。逆に言えば、敬いの気持ちと気働きの力がなければ、ビジネスマナーを現実の場面で実践することは難しい。新人マナー研修に効果がないのであれば、形式だけではない、敬いと気働きを重視した内容に変更するか、そうでなければ、この2点から採用の基準や組織風土を変えるか、を検討すべきである。(川口雅裕)

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