冒頭にも触れたが、この日、ソニーが32年ぶりに心理的な節目である1000円を割り込んだ材料は、同社固有のものではない。
私は1967年生まれで、ソニーのウォークマンが爆発的にヒットしたことを鮮明に記憶する世代であり、実際に買った人間だ。拙宅には、息子用にプレイステーションもある。ソニー大好き人間ではないが、ソニーの新製品が出るたびにパンフレットを集め、実際に店頭で買うかどうか散々迷ったクチだ。
なのに、である。2003年に同社の業績悪化に起因する一大騒動を取材し、記事を書いてきた人間としては、寂しい限りなのだ。
ソニーが主語の記事であるにも関わらず、同社渾身の新製品がコケた、あるいは一大戦略転換が失敗したなどの要因がなく、単にチャート上の事柄だけで扱われてしまう“モニュメント銘柄”に成り下がってしまったのか、ということなのだ。
足元、ソニーの業績は“ショック”のときよりもさらに悪化している。主力のテレビ事業は8期連続の赤字であり、パナソニックやシャープなど同業のライバルよりも傷跡が深いのは明白だ。
旧知の資産運用会社のアナリストは、子供の頃から筋金入りのソニー派だったが、実際の企業分析となると相当に手厳しい。先週の大台割れについてコメントを求めると、次のような辛辣な答えが返ってきた。
「ここ2、3年、ソニーは個人投資家の値幅取りやディープバリュー(超割安)株専門のヘッジファンドしか興味のない銘柄になった。ディープバリューとは、企業戦略や商品の善し悪しの判断対象から外れた銘柄であり、業界内でボロ株と同義語だ」――。
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