「スマホに乗り換えて良かった」と言わせるために――3キャリアの戦略・夏の陣神尾寿の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年06月13日 08時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

dマーケットで動画やアニメの配信を訴求――NTTドコモ

 まずこの分野で矢継ぎ早に新サービスを展開するのが、NTTドコモだ。同社は昨年スマートフォン向けのコンテンツサービスとして、iモードの進化形となる「dメニュー」と、コンテンツストアの「dマーケット」を開始。特に後者はスマートフォンを初めて使う一般ユーザーを意識し、定額制の動画配信サービス「VIDEOストア」を中心として訴求を行った(参照リンク)。この施策は奏功しており、dマーケット VIDEOストアはサービス開始からわずか5カ月で100万会員を獲得している(参照リンク)

 さらにドコモは、今年の夏商戦に向けて「dマーケット アニメストア」も7月から開始する予定だ(参照リンク)。同ストアは角川書店と提携、合併会社を設立して展開するもの。アニメは10〜20代に広く親しまれるポップカルチャーであり、この世代にとっては往年のオタク文化というイメージはなくなっている。そのためドコモがスマートフォン分野で特に重視する「若年一般層の獲得」という戦略と合致するだろう。また、ドコモでは「アニメストアは国内の若年層市場獲得だけでなく、将来的な(コンテンツビジネスの)海外展開まで視野に入れたもの」(ドコモ経営幹部)と位置づけており、その重要性はとても高い。アニメストアは今後の展開次第で、ドコモのキラーサービスになると筆者は予想している。

「アプリ取り放題」などauスマートパスが好調――KDDI

auではスマートパスポート構想の第一弾、月額390円の「アプリ取り放題」が好調

 昨年のiPhone獲得移行、快進撃が続くauも、今年に入ってコンテンツサービスの拡充に余念がない。同社は今年、スマートフォン時代の新たなコンテンツやサービスのあり方を定義する「スマートパスポート構想」を推進。この中でコンテンツは、「auスマートパス」という新たなプラットフォームを軸に一般ユーザーへの訴求を行っている(参照リンク)

 このauスマートパスにおいて、最初に成功したのがAndroidスマートフォン向けの「アプリ取り放題」だ。これは月額390円で、auが用意したアプリはすべて追加料金なしで利用できるというもの。ユーザーの感覚では月額390円を支払っていれば、アプリは「タダでいくらでも使える」ように見えることが奏功し、サービス開始からわずか2カ月で会員数が100万人を突破した。

 さらにこの夏商戦に向けては、auスマートパスに加えて定額の動画配信サービス「ビデオパス」と、同じく定額の音楽配信サービス「うたパス」を展開する(参照リンク)。前者は最新作の映画・ドラマなどが用意されることが他社に対する優位性であり、後者は邦楽も多数ラインアップして「聴き放題」を実現したことが特徴だ。どちらのターゲットも、ドコモのアニメストア同様に、10〜20代の一般ユーザー層となっている。しかし、KDDIでは「店頭訴求では、まずはスマートパスの定着を図ることが最優先。ビデオパスやうたパスは、その(スマートパスの)上のサービスという位置づけ」(KDDI経営幹部)であるため、当面の会員獲得目標は数十万規模と控えめだ。

スポーツ、ムービーなどを配信――ソフトバンクモバイル

 一方、業界3位のソフトバンクモバイルは、今年の夏商戦にあわせてスポーツに特化した動画配信サービス「スポーツLIFE」を開始(参照リンク)。また、すでに展開中の「ムービーLIFE」のコンテンツも拡充し、動画分野で先行するドコモとKDDIに追随する。

 ソフトバンクモバイルはこれまで、AppleのiPhone/iPadが主力商品ということもあり、Appleのコンテンツサービスと重複する「キャリア独自のコンテンツサービス」への展開や、そのためのプラットフォーム構築への投資には熱心ではなかった。そこはAppleのiTunes Store/App Storeを活用する姿勢だったのだ。しかし、ドコモとKDDIが独自のコンテンツサービスを展開し、スマートフォン市場の一般化も進む中で、同社も今後はコンテンツサービスへの投資を余儀なくされるだろう。

スポーツLIFEは3分程度の試合のダイジェストムービーが見放題になるサービス。ムービーLIFEのコンテンツ数は5万本以上

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