100人来ても、99人が何も買わないコンビニってどうよ?(2/2 ページ)

» 2012年06月13日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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離脱者を生む3つのポイント

 では、なぜ「買うつもりでやってきたお客さんを99%も逃している」のに、担当者はそのことに正面から向き合わないのか。離脱者の解析に力を入れないのか。

 ネットショッピングにある注文ボタンは、何色で、どの大きさがいいのか。そこに表示する言葉は「注文」がいいのか、「注文する」がいいのか。そんな小さな違いを解析しても、離脱率はほんの数%しか改善しない。しかし、訪問数が数百万アクセスに拡大しているのなら、ほんの数%の意味は大きくなる。さらにその数%の改善を数百個行えれば効果も絶大である。

 色恋沙汰は、感情一つでひっくり返る。日ごろの小さなひび割れは気持ち1つで塗り固められる。しかし、ダイレクトマーケティングビジネスはそうはいかない。感情に左右されない繰り返しであるからこそ、「ひび割れ補強=日々の離脱のマネージメント」が大事なのである。小さなひび割れの大きな意味が分かっている人だけが成功する。

 前述の覚田義明社長から、「ネットショッピングには、たくさんの離脱者を生むポイントが3つある」と教えていただいた。

1.「これしかない」がない

 売れないサイトは、商品の魅力の伝え方が断然へたくそ。自社商品の中身を伝えることに一生懸命で、ほかの商品とどう違うかという魅力が伝わっていない。

2.「ここしかない」がない

 ネットですもの……最後は価格の比較をする。当たり前である。であるなら、価格の比較をさせる前に、どんな「お得」があるのか、このサイトで買う意義を小さく埋め込んでいくかである。

3.「今しかない」がない

 アマゾンの開発者グレッグ・リンデン氏は次のようなことを言っている(参照リンク)。

 「この結論に驚くかもしれない――ユーザーが0.5秒の遅れに気付くかって? しかし、Amazon.comでもわれわれは同様の経験をしている。100ミリ秒単位でページ表示を遅らせるA/Bテスト(条件を変えて2つのサービスを 同時に公開するテスト)で、非常に小さな遅延ですら、収入に大きく響いてくるということを発見した。速いというのは本当に大切なことだ。マリッサが言うように……“ユーザーはスピードに敏感に反応する”のだ」

 ネットショッピングは、時間との勝負である。より早くより良いモノにアクセスし、1秒でも早く決済まで持ち込む。お客さんたちの「今しかない」への対応のために日々の改善の努力を惜しまないことである。

 離れていった恋人を追いかけるのは辛いものである。追いかければ追いかけるほど、自分のダメさ加減に気付くことになる。嫌われたとあきらめて、次に向かった方が前向きな気がするものだ。しかし、そういう人に限って同じ失敗を繰り返す。

 「去っていった=もしくは嫌われたかもしれないであろう」99人の中の1人と、もう一度、恋愛をやり直そうという発想を持ち、焼けぼっくりに火を付けることができるのがネットで食っていける人たちの能力である。

 この1%理論は、明日からでも実践できる。ネットの世界では1%を笑う者は、1%に泣かされる。(中村修治)

 →中村修治氏のバックナンバー

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