AKB48総選挙に思うこと誠 Weekly Access Top10(2012年5月26日〜6月1日)

» 2012年06月08日 12時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由」。2位は「1000年前の世界都市人口ランキングから見えてくるもの」、3位は「なぜガンダムは海外で人気がないのか」だった。

AKB48総選挙に思うこと

 6月6日に行われた第4回AKB48総選挙。肯定否定さまざまな声があったが、開票を中継したフジテレビの視聴率は関東地区で18.7%(関西地区は17.9%)と好調だったようだ。

 しかし、投票方式の違いもあるが、総投票数は昨年の1.2倍程度と、倍々ゲームで増えてきた昨年までより伸びは小さかった。そろそろ限界が来ているのかな、と筆者は感じたりもするのだが、それでも水物と言われるエンタテインメント業界で数年にわたって人気を保ち続けているのは、すばらしいのひと言である。

 その最大の立役者であるプロデューサーの秋元康氏。昨年、ASIAGRAPH 2011で創賞を受賞した時のトークセッションを記事にしているので(「『分からないものが一番いい』――秋元康氏のAKB48プロデュース術」)、ぜひ読んでいただきたいのだが、筆者が記事の中で興味深かったのが次のくだりである。

 ただ、思いは伝わりますよ。思いというのは「こういうことでこうなんだよ」と僕が夜中にだいたい2時間くらいもかけて、昔の携帯電話でいうと何ページにもわたるメールを書くんです。

(中略)

 年をとると、だんだんしつこくなってくるので。それと分かりやすくしないといけないと思ったので、「人間には人生で1度だけ全力でやらなきゃいけない時がある」といったことを一生懸命書くわけです。

 それは伝わるんです。伝わるのですが、僕は忙しい中、朝4時くらいから6時くらいまで2時間かけて書いたメールを送って、昼くらいに返事が来るんですよ。手のマーク1つですよ、「ラジャ」と。普通「ありがとうございます」とか「ここの部分がすごく胸に響きました」とか、そういうのあるじゃないですか。ないんですよ。「ラジャ」と、平成生まれの子たちは。

 企業経営では、会社が大規模になると経営理念の浸透が大切になると言われる。アイドルのプロデュースでもそれと同じく、どういう方針で進めようとしているかをしっかり伝えることが大切なんだろうなと感じた場面である。

 そんなAKB48だが、プロデュース面とは別にマーケティング面でも驚いたことがある。それは開票前日に、秋葉原のAKB48カフェの前を通った時のこと。

 総選挙に絡んだ順位予想イベントを行っていて、それ自体はよくありそうなことなのだが、内容を詳しく見てビックリした。「1〜64位まで予想してすべて当たったら」という賞を用意しているのである(1回応募するためにAKBカフェで1000円使う必要がある)。それぞれの順位を75%の確率で当てられるとしても、1位から64位まですべて当てられる確率は1億分の1しかない。

AKBカフェの順位予想イベント

 ただ、筆者はこれはAKB48のマーケティングを象徴していることであると思う。報道によると、総選挙で目当てのアイドルに投票するために、非常に多くの枚数のCDを1人で買った人もいるそうである。この順位予想イベントでも当選確率を高めるため、何度も通った人がいるのではないだろうか。1位を当てるだけなら数回通うだけで有力候補を全員予想に入れられるだろうが、64位までが対象だと満足いくまで予想するのはなかなか難しい。

 筆者も好きな歌手がいるのだが、CDやグッズ、コンサートチケットなどを全て買ったとしても年間数万円ほど。もう少し出せないこともないのだが、出そうと思っても手軽にお金を出せるグッズなどが存在しない。一方、AKB48ではCDに付属する投票権や握手券、そしてこの順位予想イベントのように、出そうと思えばいくらでも出せるような仕組みを積極的に導入している。

 コンテンツの価値が正当に売り上げに反映される、という意味では正しいようにも思えるこの方式。みんながCDを買っていた時代から、YouTubeなどで無料で音楽を楽しむ人とグッズなどに多額のお金を費やす人に分かれる時代に移行したということで、月額課金から基本無料のアイテム課金に移行していったネットゲーム業界にも似ているようにも思えるのだが、“重課金者”が全体の売り上げのどれだけを占めているのか、知りたいところである。

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