ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。
これまでに「スターバックスのCS(顧客満足)」や「大垣共立銀行のサービス改革」についてサービスサイエンスの視点で成功のポイントを考えてきました。今回は、日本マクドナルドに着目したいと思います。
日本マクドナルドは、2011年の年間売上高は5350億円で8年連続でプラスとなり、ハンバーガー業界では2位を大きく引き離しています。また、2011年12月の単月の売上高が上場以来最高を更新し、まさに絶好調です。
そんなマクドナルドで注目されているのが、ひとりひとりに異なる値引きを行う個人仕様の新型クーポンです。すでにご存じの方も多いかと思いますが、これはお客さんひとりひとりの購入履歴(誰が、いつ、どこで、何を購入したかなど)を分析して、そのお客さんに合ったクーポンを携帯電話に配信するというサービスです。例えば、次のようにお客さんに合わせて、それぞれに異なる内容のクーポンを配信しています。
このクーポンから「共感性」と「サービス共創」の2点のポイントが見えてきます。
これまでのクーポンは、すべてのお客さんに対して同じ内容のものを提供していました。これはサービスサイエンスで言うところの「共通的事前期待」に応えるクーポンだということになります。実は、すべてのお客さんが同様に感じている共通的事前期待に応えるだけでは、「気の利いたサービス」という高い評価をいただくことはなかなか難しいのです。
一方、マクドナルドの個人仕様のクーポンは、お客さんひとりひとりに合った内容を提供するものです。つまりは「個別的事前期待」に応える、共感性のあるクーポンということです。この個別的事前期待に応えるということが、サービスの評価や顧客満足度を高めるのに、大変重要なポイントになります。
例えば、何回かお店を利用していたら、店員さんが名前や好み、前回話した内容を覚えてくれていて、自分に合ったサービスを提供してくれたらうれしくなりますよね。また、有名な話ですが、リッツカールトンホテルの利用が2回目の時に、何も言っていないのに部屋のベッドに自分好みの枕がセットされて感動したというエピソードなんかも、まさに個別的事前期待に応えるサービスです。
そのために有効なのが「顧客カードや顧客データベースの活用」です。このお客さんがどんなお客さんなのかを、過去の利用履歴やプロフィールなどから把握することで、お客さんひとりひとりに対して共感性の高いサービスを提供できるようになるのです。マクドナルドでは、こういった仕組みを2004年から300億円かけて構築してきたことで、このような個人仕様のクーポンが提供できるようになったというわけです。
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