野田×小沢会談の決裂が明らかにしたもの藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年06月04日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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本来的にやるべきことは社会保障給付の削減

 民主党は、2009年のマニフェストで、いわゆるリベラル的な政策を描いて見せたが、財源問題と政策の整合性でつまずいている。それにもし野田首相が、日本の財政状況から言ってこの「一体改革」が待ったなしであると言われるのなら、本来的にやるべきことは、社会保障給付の削減でなければならない。

 もともと現在、約22兆円ほどある「基礎的財政収支の赤字」を埋めるために、消費税の増税だけでやるのは無理な相談なのだ。なにせ22兆円といえば、消費税でいうと11%分に相当する。2015年までに10%に引き上げても、まだ5%分は上げなければならない。もちろん経済が政府の目論見どおり名目3%実質2%も成長すれば話はずいぶん違ってくるが、デフレから脱却することもままならない状況で、それほど成長力があるとはとても思えないのである(今年の第1四半期は年率4%を超える成長率だったが、これは「復興特需」があるからで、今年後半は息切れが心配されている)。

 それに今年の予算で最大の支出項目である社会保障関係費と地方交付税交付金は合計で約43兆円。しかもここは現在の制度のままでも毎年1兆円以上増えるのである。今年から団塊の世代が前期高齢者に入りはじめたから、医療費も増えることが予想されている。そうであれば、例えば老人医療費の窓口負担の軽減措置は止めなければならないだろうし、国民背番号制の導入による所得の把握とそれに伴う社会保障費や医療費の無駄の削減などが喫緊の課題だ。つまり社会保障関連の支出を持続可能な形にしないと、ただただ野放図に支出が増えて、「低福祉高負担」の国になりかねない。

 自民党も妙な妥協をせずに、過去の反省も込めて持続可能な日本の形を追求すべきだと思う。6月21日の会期末を控えて、いろいろな政治的思惑が交錯するのだろうが、日本が現在抱えているトラブルを解決できるのかできないのか、その時限爆弾も時を刻んでいることを、政治家は忘れないでもらいたいものだ。

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