野田×小沢会談の決裂が明らかにしたもの藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年06月04日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 それにしても何という体たらくだろう。野田総理と小沢元代表の会談である。どれほど小沢代表が力があろうと、これは党内問題だ。輿石幹事長がわざわざセットして鳴り物入りでやるような話ではあるまい。小沢元代表がどうしても消費税引き上げ法案に賛成できないというなら、それは袂(たもと)を分かつしかないのである。

 そして小沢元代表と袂を分かつのなら、輿石幹事長を外すしかない。もともと輿石氏を幹事長にすえたのは、野田氏が代表に選ばれたときに「ノーサイドにしましょう、もう」と言ったからだった。小沢サイドとの融和を図るための人事だったのだから、それを調整できず、決定的対立(党議拘束があっても採決すれば反対票を投じると小沢氏は明言した)にまで持ち込んでしまったのは輿石幹事長の責任である。

 野田総理は、「命を懸けても消費税引き上げ法案は今国会中に成立させる」と断言した。その言葉は今や「国際公約」になっている。それが難しい公約であることは誰しも承知しているが、もし実現できなければ野田首相のリーダーシップは信用されなくなる。そして信用を失えば、普天間基地問題は解決できないし、通貨円はいいように利用されるだろう(売られたり、買われたり、国際投資資金の思うままに利用されるということだ)。

 自民党との修正協議ということになれば、焦点は消費税引き上げそのものではない。税と一体的に改革される社会保障をどうするかということだ。なかでも民主党と自民党の最大の違いは「最低保障年金」という思想である。月7万円を年金掛け金を払っているかいないかにかかわらず、誰にでも保証するというのが民主党のマニフェストだが、自民党はこれに強く反対している。

 もしこの月7万円を税金から支出するとなると、これだけで消費税の数パーセント分は吹っ飛ぶのだという(実際にどの程度の年収の人まで支給するかによって必要額は大きく異なる)。年金は保険制度、つまり掛け金を払っている人が受け取れる仕組みである。ということは、「掛け金を払わなくてももらえるということになったら、国民年金に入っている人は払わなくてもいいということにもなりかねない」というのが自民党の主張だ。

 本来的に低所得者対策というのなら、最低保障年金ではなく、生活保護にするのが筋だ。今、生活保護の「不適当」受給と生活保護の金額が議論の的になっているが、その金額や基準はどうであれ、これはセーフティネットそのものだ。年金は本来的にセーフティネットではないのだから、そこに巨額の税金を投入するのは適当ではないと思う。

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