“金太郎あめ”車両が、増えた理由どうなる? 鉄道の未来(おまけ)(3/6 ページ)

» 2012年06月02日 00時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

杉山:車両のIT技術化に話を戻すと、信号だけではなく、信号と連動する制御装置、空調、運転席に表示される車両情報システム、ドアの上にある旅客案内用ディスプレイなど、あらゆるところにコンピュータが使われています。コンピュータの分野は進化が早く、「ドッグイヤー」と呼ばれるほど個々の技術の寿命が短い。最新技術を投入するためには、車両まるごと早めに更新させたい。そうなると、耐用年数は短くていい、だから構造体の重量も下げられる。価格はどうかな。半分にはならないような気がしましたけど。

大塚:京浜東北線・根岸線での在籍期間は確かに「寿命半分」でした。しかしこの車両は千葉県の房総半島を走る路線に回され、玉突きで国鉄時代から活躍していたスカ色(クリーム色と青色のツートーンカラー)の113系が駆逐されました。首都圏からのアクセスが良く、自然も豊かな房総半島の路線は観光客が多く利用しているのに、乗りこむ車両が「走ルンです」では平日の大都会でのラッシュが頭から離れないのではないでしょうか。

 同様にJR東日本が山手線や総武線などで使っている車両(E231系)も“合理化の申し子”と呼ぶべき存在で、関係者によると大量発注したため1両当たりの平均価格は1億円を下回るそうです。ちなみにJRの通勤列車は、1両当たり1億数千万円と聞いていますので、このE231系は“線路上のデフレ王”という称号を贈りたいですね(笑)。

JR東日本の湘南新宿ラインとして走るE231系(場所:新川崎駅付近、撮影:大塚圭一郎)

 またこの車両の車体構造や設計は、横展開されています。例えば東京急行電鉄の田園都市線(5000系)や東横線(5050系)、東京都営地下鉄新宿線(10―300形)、神奈川県を走る相模鉄道(10000系)などで走行しています。経営面では投資額を抑えるのに役立っていると思いますが、その半面、面白みに欠ける車両が増えてしまっているのではないでしょうか。

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