“金太郎あめ”車両が、増えた理由どうなる? 鉄道の未来(おまけ)(2/6 ページ)

» 2012年06月02日 00時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

大塚:銀座線の1000系はレトロ風のデザインを採用した一方で、21世紀の車両らしい技術を満載しています。カーブを通過する際に車軸の向きを変えることで騒音や振動を抑えたり、省エネルギー化するためにヘッドライトや車内照明に発光ダイオード(LED)を用いています。

 ただ、近年誕生している通勤型車両で1000系のように創意工夫を凝らしているケースはまれ。製造コストを下げるためにデザインや部品を共通化し、清掃しやすいように座席の配置や内装も簡略化した味気ない車両が増えています。

 このような事態を招いた大きな転機が、富士フイルムの使い捨てカメラ「写ルンです」を文字って「走ルンです」と揶揄(やゆ)されたJR東日本の209系でした。1993年から京浜東北線・根岸線などに本格導入されたこの車両は「重量半分・価格半分・寿命半分」というコンセプトで設計され、車体の重量を軽くすることで消費電力量と費用の削減、簡素化と大量生産による製造コストの引き下げを実現しました。

 旧日本国有鉄道のコスト意識が甘かったため赤字が膨らみ続け、1987年の分割民営化につながったことに鑑(かんが)みれば、合理化一辺倒の209系の導入はコペルニクス的転回と言えるほど革命的でした。ただ「寿命半分」と割り切って安普請(やすぶしん)で面白みに欠ける設計にしたことは、大量消費社会の負の側面と言えるのではないでしょうか。

杉山:うーん、僕はちょっと違う印象をもっているんです。もともとコンピュータ業界だったせいもあるのですが、価格半分、重量半分のコスト削減は、まず寿命半分があるからでしょう。寿命半分の理由はコストではなくて、車両のIT技術化だと思うんです。

 鉄道車両の寿命については、税法上の耐用年数は13年(参照リンク)。でも実際はもっと長く使っているし、JR西日本では列車によっては40年間も使おうとしています。これに対して、JR東日本209系のコンセプトは「税法上の13年間を使い、あとは使えるだけ使って更新工事はしない」という考え方。ちなみに新幹線車両は国鉄時代から使用年数を15年と決めているようですね。走行距離もあるのでしょうが。

JR東日本209系のコンセプトは「税法上の13年間を使い、あとは使えるだけ使って更新工事はしない」(撮影:杉山淳一)

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