デジタル教育ならではの教材ってどんなもの?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(1/3 ページ)

» 2012年06月01日 08時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2012年5月28日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。

 教育のデジタル化を急げ。

 だが、課題も山積している。デジタル教科書や情報環境をどのように開発するのか。そして、それを学校や家庭にどのように普及させ、コストをどう負担し、利用を定着させていくのか。

 私が事務局長を務めるデジタル教科書教材協議会(DiTT)は、政府計画を5年前倒しし、2015年には「全科目デジタル教科書の制作、1人1台情報端末の配備、全教室超高速無線LAN」の三位一体を実現することを目指している。すべての子どもにデジタルを。

 しかし簡単ではない。子どもたちが使う情報端末も、デジタル教科書や教材も、学校のネットワークも、圧倒的に不足しているか、そもそも存在していない。端末も教材もクラウド環境も、これから創り出し、改良に改良を重ねていかなければならない。

 特に教科書。「デジタル教科書」とうたいながら、デジタル教科書なるものは世の中に存在しない。学校で使える教科書は法律に定義があって、紙の「図書」とされているので、デジタルはどうがんばっても教科書になれないのだ。まずは学校教育法などの改正が必要になる。

 検討事項も山積している。学習用の専用端末を開発するのか、汎用端末を活用するのか。端末は家に持って帰ってもいいのか、学校にすえ置きか。ペン入力は必須か。情緒、姿勢、視力などへの影響はどうか。ハード・ソフトのメンテナンスや保証はどうなるか。電子黒板との併用か。コンテンツは端末にインストール・記憶するタイプか、すべてクラウド上に置いておくのか。これらによって、端末もネットワーク環境もコンテンツも設計が異なってくる。

イラスト:ピョコタン
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