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» 2012年05月31日 08時00分 UPDATE

アニメビジネスの今(後編):米国でガンダムよりトランスフォーマーが売れるワケ (1/4)

西欧ではロボットに対する嫌悪感がありながらも、米国で『トランスフォーマー』はヒットしている。それが実現できた背景には、米国サイドがクリエイティブをコントロールして、ローカライズを行っているからかもしれない。

[増田弘道,Business Media 誠]

アニメビジネスの今

今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。


 前回の記事では、キリスト教圏、つまり西欧では“フランケンシュタイン・コンプレックス”(「ロボットが人間に反逆するのではないか」という機械嫌悪に基づく不安。SF作家のアイザック・アシモフが唱えた)がロボットキャラクターの普及をさまたげていると述べた。

 →「なぜガンダムは海外で人気がないのか

 『新世紀エヴァンゲリオン』などはタイトル自体がキリスト教的であるため、前回主題にしたガンダム以上に普及は難しいだろう。「福音(evangel)」をもたらすのがロボットとは、クリスチャンとしては生理的に受け入れられないだろう。

 だが、一方でヒットしているロボットキャラクターもある。もともと日本のロボット玩具であったトランスフォーマーは、2007年に公開された映画『トランスフォーマー』とその続編により、興行収入と関連商品あわせて2兆円の市場を生み出したという(朝日新聞デジタル2011年11月3日版)。

 トランスフォーマーの権利を持つ米国の玩具会社ハズブロの2011年売上は4億8300万ドルで、これらの数字を見るとトランスフォーマーはフランケンシュタイン・コンプレックスを克服したように見えるが果たしてそうなのだろうか。

ah_tora0.jpg トランスフォーマー(出典:タカラトミー)

売上が同じのトランスフォーマーとガンダム

 ハズブロは、米国ではマテルに次ぐ売上規模の玩具会社。主力商品はスター・ウォーズ、G.I.ジョー、ミスター・ポテトヘッド、セサミ・ストリートといったものだが、タカラトミーとの提携でトランスフォーマーやベイブレードも扱うようになった。企業イメージは、日本で言えばバンダイナムコやタカラトミーといった感じだろうか。売上規模はバンダイナムコとほぼ同じ。

 次表はハズブロ社のここ10年間の売り上げだが、2002年から2006年までは30億ドルをわずかに超す程度の売り上げだったのが、2007年から一挙に40億ドルレベルに引き上げられた。これは明らかに映画『トランスフォーマー』シリーズの効果によるものである。

ah_tora1.jpg ハズブロ売上推移(単位:億ドル、出典:ハズブロ)

 そして、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』が公開された2011年には、42億8559万ドルと過去最高の売り上げとなった。この中で『トランスフォーマー』の占める売り上げは4億8300万ドルである。ちなみに『トランスフォーマー』に次ぐ売り上げはベイブレードで、日本勢の貢献度は高い。

 『トランスフォーマー』の売り上げは1ドル80円で計算すると386億円となり、バンダイナムコにおけるガンダムの382億円とほぼ同じ。両社の売り上げ、看板キャラクターの売り上げもほぼ同じとは奇妙な一致だが、ワールドワイドで売れているトランスフォーマーと内需型のガンダムが同レベルとはどういうことだろうか。

 これは、トランスフォーマーの収入にはライセンス収入が多いことが原因なのだろう。ガンダムはガンプラなど完成された商品自体を販売するので当然売り上げは多くなる。それに対し、トランスフォーマーは商品自体の売り上げもあるだろうが、自社以外で制作される商品からのライセンス収入が多いと思われる。

 売上原価がかからないライセンス収入は純利益に近くなる。バンダイナムコとハズブロに計上されているガンダムとトランスフォーマーの売り上げはかなり性質が違っていると思われるが、それが売上総利益率(粗利率)がバンダイナムコは36.9%なのに対して、ハズブロは57.2%という結果に現れているのだろう。

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