乗ってはいけない航空会社はどこ? EUの「出禁リスト」山田敏弘のワールドスコープ(2/3 ページ)

» 2012年05月31日 08時00分 公開
[山田敏弘,Business Media 誠]

飛行機がハイテクになっても、墜落事故がなくならないのは何故?

 ただし可能性は低くとも、飛行機事故はなくなってはいない。つい最近も2つの大きな墜落事故が起きている。パキスタンでは2012年4月20日に、首都イスラマバード近郊のイスラマバード国際空港近くで、127人を乗せたボジャ航空のボーイング737が住宅地に墜落、子供11人や新婚カップルを含む乗員乗客全員が死亡した。

 インドネシアでは2012年5月9日にロシア製民間旅客機が墜落し、乗客45人全員が犠牲になった。インドネシアの事故で墜落したのは、先日復帰したばかりのウラジミール・プーチン大統領が国家の威信をかけて後押しするロシアの大手航空機メーカー、スホーイが製造した初の民間旅客機「スホーイ・スーパージェット100」だ。経済成長する新興国インドネシアの航空会社などに、自社の飛行機をアピールする目的でデモンストレーション飛行を行っていた。搭乗していた多くのジャーナリストやスホーイの関係者、顧客になる可能性があった航空会社関係者、大使館関係者などが事故の犠牲になった。

山田敏弘 スホーイ・スーパージェット100(出典:スホーイ)

 こうした墜落事故の原因はどこにあったのか。まずは経験不足だ。運行経験の乏しい航空会社は、飛行の安全にもそれが出る。パキスタンの事故では、ボジャ航空はこの航路を飛んだことがなかった。また深刻な嵐が来ているとの警告に対してパイロットが適切に対応できず、さらに整備がきちんと行き渡っていなかったとの指摘も出ている。ロシアのスホーイも初の民間旅客機で飛び慣れないインドネシアで山の側面に突っ込んだ。

 スホーイはロシアの戦闘機メーカーとして実績はあるが、旅客機に関しては未知数だった。評判もあまりよくなかった。例えば、同機のエンジンが2010年に検定試験を通過できなかったこともあったと報じられている。またインドネシアとは別のデモンストレーション飛行に参加したある米国人ジャーナリストが、そのお粗末ぶりを指摘している。

 航空機の安全性を語る上で何よりも注意すべきは飛行機の古さだろう。パキスタンで墜落したボジャ航空のボーイング737は、32年前の旅客機だった。もともと南アフリカでブリティッシュ・エアウェイズが使っていたものを同社が買い受けた。

 この2つの事故から得られる教訓は、「不明瞭」で「怪しい」航空会社の飛行機は気をつけるべき、ということだ。また飛行機に乗る国の仕事に対する意識や文化も、気に留めるべきだ。賄賂の横行するような国では、安全性の調査もそれなりだと思っていい。例えばインドネシアで急速に成長している格安航空会社ライオン・エアーは、ここ1年以内に4人ものパイロットが薬物所持で捕まっている。パイロットのワークエシックス(職業倫理)という意味では、先進国ではあり得ないことだろう。

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