なぜガンダムは海外で人気がないのかアニメビジネスの今(前編)(3/4 ページ)

» 2012年05月30日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

海外におけるロボットキャラクター

 まず、海外で人気のロボットキャラクターについて考えてみたい。ここでの人気キャラクターというのは単に知名度が高いだけでなく、商品が出るほどのキャラクターという意味である。それを基準とした場合、ワールドワイドで現在最も人気なのは「トランスフォーマー」だろう。

 それ以外は『WALL-E(ウォーリー)』や『スターウォーズ』のR2-D2とC-3POが頭に浮かぶが、意外と思い付かない(これらのキャラクターはロボットというよりはペットである。『ドラえもん』もそうだが擬人化された動物キャラクターに近い)。比較的記憶に残っているのは『ブレードランナー』のヒューマノイド、『ターミネーター』『ロボコップ』『A.I.』に出てくるロボットといった程度で、知名度の高いロボットキャラクターが少ないことが分かる。こうした状況は“ロボット王国”である日本からするともの足りないものがある。

 なぜ海外では日本のようにロボットキャラクターがもっと活躍できないのか。あるいは、なぜガンダムや『新世紀エヴァンゲリオン』といったロボットアニメが海外では受け入れられないのか。その一方、どうしてトランスフォーマーは世界に飛び出せたのか。その原因を探るに当たって、まず知らなければならないのは日本の特殊性だ。

 私たち日本人はマンガやアニメといった娯楽分野だけでなく、ホンダのASIMOや産業用分野などさまざまな局面で、ロボットに接する機会がある。ところが、これほどロボットというジャンルが一般的になっている国は世界中見渡してもない。

 日本がロボット大国であるのは産業用ロボット業界でもみられる現象だ。産業用ロボットの稼働状況をみると、日本は1980年代から急速に台数を伸ばし、1995年には38万7290台と世界シェアの実に64%を占めるまでになった。その後、欧州諸国や中国などの工業発展でシェアは減りつつあるが、実はそれらの国々で稼働しているロボットも日本製が多いのである。

世界の産業用ロボット稼働台数(単位:台、出典:日本ロボット工業会)

 日本の産業用ロボットの輸出はリーマンショックで一時的に落ち込んだものの、2010年から大幅に回復、2011年には7万3000台、金額にして1218億円と過去最高の実績となっている。エンタテインメントでも、リアルな世界でもロボットで一杯の国なのだ。

産業用ロボット輸出台数(単位:台、出典:門司税関)

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