危機に瀕する地方鉄道に、打つ手はあるのかどうなる? 鉄道の未来(7)(5/6 ページ)

» 2012年05月30日 08時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

大塚:西村京太郎さんや内田康夫さんなどが書かれたミステリー小説の舞台もいいですね。静岡県の第三セクター鉄道、天竜浜名湖鉄道は西村京太郎さんの小説の舞台として取り上げられることに成功しました。ただ、星の数ほどある西村作品の中では知名度が高い著作とは言えず、観光客獲得への効果が限定的なのが課題ではあるのですが……。

杉山:ベストセラー作家ですし、私もほとんど読んでいます。ただ、観光を起こすコンテンツとしては殺人事件ばかりで血なまぐさいのはどうかと思う(笑)。

 多くの作品を書かれている方もいいですが、発掘することも大切ですよね。日本のコンテンツはものすごいパワーがあるので、それと鉄道がタイアップする。もっと積極的に取り組んでもいいですよね。

大塚:乱立する「ゆるキャラ」をどうすべきかという問題もあります。せっかく創作しても、浸透せずに消えていく「ゆるキャラ」が続出してしまうことを危惧しています。

杉山:ゆるキャラを見に行く人って、鉄道ファンではないと思うんですよねえ。個人的にはゆるキャラにお金を使うのであれば、きっぷを買いたい(笑)。もちろんゆるキャラが好きな人に、鉄道の良さを分かってもらうことは大切なことで、きっかけとして取り込んでいくといいと思います。

天竜浜名湖鉄道の主力車両「TH2100型」(左)、天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅にある木造の扇形車庫は、国登録有形文化財となっている。今も現役で使われている(撮影:大塚圭一郎)

地方鉄道の問題は山積み

杉山:地方鉄道の問題について、考えなければいけないことは山ほどあります。しかし東京に住んでいると、そういう感覚が鈍ってしまう。例えば、東京に住んでいると、電車は少なくとも10分おきくらいで走っていないと不便だと思う。でも地方の鉄道に乗りに行くと、ちょっと郊外へいけば大手私鉄でも30分に1本だったり、1時間に1本だったり。でもそのリズムで人々は生活しているんですね。むしろ東京の運行本数が特異な状態といえる。

大塚:おっしゃるとおりですね。審議会のメンバーも、検討する国交省も東京が中心なので、地方とのズレが生じています。

 政府は休日に高速道路の上限料金を1000円に抑えたり、地方の一部区間で無料化する社会実験を実施したりと高速道路に肩入れしてきました。1000円高速による一時的な経済的効果はありましたが、税金をドブに捨てた感じも否めません。その血税を元手に地方の鉄道やバスの運転に役立てるなど、むしろ交通弱者の問題に取り組むべきだったのではないでしょうか。

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