危機に瀕する地方鉄道に、打つ手はあるのかどうなる? 鉄道の未来(7)(4/6 ページ)

» 2012年05月30日 08時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

地方鉄道を再生させるカギ

杉山:鉄道が登場するコンテンツの力をもっと利用すればいいと思っています。例えば、アニメ『けいおん!』のロケ地という縁で、KTR北近畿タンゴ鉄道や京阪電鉄はラッピング列車を走らせた。それを“聖地巡礼”としてアニメファンが訪れた。ラッピングトレインは珍しいから鉄道ファンも見に行く。コンテンツがひとつできたことで、多くの人が移動する。

 コンテンツがまちおこしをしたという代表例のひとつとして、北海道の富良野が挙げられます。倉本聰さんが『北の国から』という作品をつくらなかったら、今でも富良野はただの田舎だったかもしれません。

 島根県にサンドミュージアムという大きな砂時計があります。これは1988年に政府が「ふるさと創生事業」として地方自治体にバラまいた1億円をつかっています。なんと1年分の砂時計をつくりました。1年かけて砂を落としていって、大晦日にひっくり返すんですよ。それだけだったら、どーしよーもない話(笑)。ところがその砂時計をモチーフに、『砂時計』という漫画が出たんですよ。少女コミックで。

 この作品は恋愛もの。幼なじみの恋が大人になってから結ばれるかどうかといった内容。漫画はヒットして、ドラマ化もされました。私もそのドラマを見ていたのですが、おもしろいなあと感じました。また映画化もされて、石見銀山あたりで撮影された。その中で出てくる小さな砂時計をサンドミュージアムでつくって売ったところ、“ロケ地巡礼”で訪れたお客さんが買うんですよ。私もいつか行きたいと思っています。出雲方面にはサンライズ出雲で行けますし、ドラマのロケ地となった駅も行ってみたい。

 出雲といえば映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の一畑電鉄も観光客が増えたと聞きます。2作目の『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』は富山地方鉄道で、これは初めから富山市の観光客誘致策のひとつとして組み込まれました。第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道は、秋田県が一度は投げ出しかけたけど、韓流ドラマ『アイリス』のロケ地として韓国からの観光客が増えたので、観光政策として存続の方針になったそうです。

 やはりコンテンツ力はすごいんですよ。小説でも漫画でも何でもいいので、コンテンツからうまく仕掛けていけば、地元や鉄道にお金がもっともっと落ちていくのではないでしょうか。

出雲(撮影:杉山淳一)

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