鉄道の未来は? と聞かれれば、答えは「厳しい」と言わざるを得ない。人口減で需要が減少するなか、台頭する格安航空会社(LCC)と整備されていく高速道路網と戦っていかなければいけないからだ。
もちろん鉄道が急速に衰退するとは思えない。むしろ首都圏では次々に新線が開業し、既存路線が整備されていっている。「過当競争に陥っているのではないか」という懸念が広がるなか、地方鉄道は赤字に苦しみ、廃止・縮小を余儀なくされている。
こうした現状に対し、鉄道会社は次の一手をどのように打てばいいのだろうか。そこで鉄道事情に詳しい共同通信の大塚圭一郎記者とBusiness Media 誠で連載をしている杉山淳一氏に、徹底的に語り合ってもらった。対談は全7回でお送りする。
→“LCC攻勢”が強まれば、鉄道会社はどうなるのか(第2回)
→「鉄道ファン=良い客じゃない」――この構図にしたのは、誰か(第3回)
→鉄道と街はどのように変化するのか――渋谷と大阪に注目する(第6回)
→(第7回、本記事)
――地方鉄道で苦戦しているところが目立っています。どのようにすれば再生することができるのでしょうか?
大塚:自治体の支援なくして、地方鉄道の生き残りは難しくなっているのではないでしょうか。杉山さんもコラムで書かれていましたが、国からの交付金と「経営安定基金」(※)が残っていて、それでなんとかしのいでいる鉄道が多い。しかし運用するにしても利回りが低下しているので、財政的に厳しいところが多いですね。
経営安定基金への追加拠出に踏み切るのが徳島県の「阿佐海岸鉄道」。逆に基金を取り崩すのが熊本、鹿児島両県を走る「肥薩おれんじ鉄道」。ここは自治体が支援しなければ事業を継続することが難しいのですが、もし支援によって市場原理がゆがめられるようであれば、国や自治体が駅や線路などの施設を保有し、鉄道の運営を民間が行う「公設民営」に切り替えるしかないのかなあと思っています。
岡山市内で路面電車を運行する「岡山電気軌道」や、三毛猫のスーパー駅長「たま」で話題を呼んだ和歌山電鉄などで構成する両備グループを率いる小嶋光信社長は、国や自治体がインフラ部分を担って運行部分を鉄道会社が担うのがいいのではないかと指摘されています。
全国35社のローカル鉄道が加入している「第三セクター鉄道等協議会」という団体がありますが、そこが毎年決算を発表しています。2010年度の決算をみると、35社のうち経常損益が黒字なのは4社しかない。その4社とは「北越急行」(新潟県)、「智頭急行」(鳥取、兵庫両県)、「愛知環状鉄道」(愛知県)、「若桜(わかさ)鉄道」(鳥取県)。
「若桜鉄道」は黒字を確保することができたのですが、そこにはカラクリがありまして……。
杉山:公設民営ですよね。つまり若桜鉄道は運営部分だけを担った。
大塚:その通りです。
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