学校が世界一のデジタル環境になったら中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)

» 2012年05月29日 08時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]
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 そこで情報化の出番。そのメリットはすでに、「授業の質が向上した」、「授業改善ができた」という評価となって現場から多数の報告が上がってきており、学力の向上をもたらすというデータが世界的にも共有されている。学習意欲の向上や生活態度の改善にも寄与するという評価も多い。

 ところが、日本は動きが遅かった。米国、英国、ポルトガルなどが力強い足取りを見せている。韓国やシンガポールは2013年に1人1台環境でデジタル教科書の本格利用を予定している。日本は7年の遅れを見せることになる。

 学習向けPCとして世界的に知られるのが「100ドルPC」。MITメディアラボが開発を進め、世界中の子どもたちに1人1台、PCを与え、インターネットでつなげることを目的とするプロジェクトだ。

イラスト:ピョコタン

 実はこれは、アスキー創業者の西和彦さんと私のグループが、2001年7月にMITに提案したアイデアがきっかけとなったものだ。すでに35か国、130万人の子どもたちが使っており、ウルグアイではすべての子どもに配布されたという。言い出しっぺの日本が遅れているのだ。

 とはいえ、政府を頼りきることもできない。教育情報化の予算はたびたび仕分けの脅威にさらされている。何より、内閣が猫の眼のごとく交代し、政権の基盤が定まらない中で、長期的で困難な課題に取り組むのは限界がある。民間が力を発揮しなければならない。

 そこで2010年7月、「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)が設立された。130社の会員企業がつどい、教育情報化に取り組んでいる。小中学生1000万人がデジタル環境で勉強できるようにすることが目標だ。

 政府計画を5年前倒しし、2015年には「全科目デジタル教科書の制作、1人1台情報端末の配備、全教室超高速無線LAN」を実現することを目指している。小宮山宏三菱総合研究所理事長(前東京大学総長)が会長を、私が事務局長を務めている。

 すでに民間企業と小中学校とが連携して成果を挙げている事例も多い。教科書会社、教育関連企業、メーカー、ソフトウェアなどの企業に加え、ここにきて、出版社、新聞社、映画会社、放送局、ゲーム会社などがデジタル教材の開発に参入する動きがみられる。これまで培ってきたコンテンツ制作力を教育分野でも生かそうというのだ。

 DiTTでも13の小学校と連携して実証研究をスタートさせた。マルチスクリーン、クラウドネットワーク、ソーシャルサービス時代の教育はどうあるべきか。どのようにして学校をワクワクしたデジタル環境へと進化させるか。力強く取り組んでいきたい。

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