コラム
» 2012年05月29日 08時00分 UPDATE

ストレスが人を成長に導く!? (1/2)

人材開発を考える際、「どのように人を教育・育成するか?」を考えがちだが、その前に「どのように人が育ってきたのか?」を考えてみる必要がある。現場の人間が成長する裏側をみると、多くの場合、何らかのストレスがそこには存在している。

[田中雄,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:田中雄(たなか・たけし)

ワークスラボ代表取締役。アセスメントデベロップメント(アセスメントと人材育成を融合した人材開発プログラム)の考えのもと、企業における人材開発体系の構築から幹部社員育成プログラムの開発、各階層におけるアセスメントプログラムの開発・実施を手掛ける。


 人材開発や人事制度構築の仕事をしていると、多くの管理職者や経営幹部の方々とミーティングをしたり、インタビューを行ったりする機会がある。その際、私の個人的な興味もあり、また人材開発のヒントを探るべく、「今まで仕事をしてきた中で、自分自身がもっとも成長できたと感じる経験とはどんなものか」について質問し、記録に残している。

 会社をリアルタイムでリードしている方々なので、多かれ少なかれさまざまな経験やエピソードを話してくれるのだが、いろいろな話を聞いていくと、その多くのストーリー中に“追い詰められた状況”や“逼迫(ひっぱく)した精神状態”というものがあり、そこから何とか抜け出そうと必死になって行動する姿がある。そして、このような状況を何とか乗りきった時に成長を感じている人が多いことに気付かされる(成功、失敗に関わらず)。

 例えば、どんな状況であるかというと「上司が急に他界し、新たな人材投入がないまま、自分がその代わりを務めなくてはならなくなった」であるとか、「明らかに技術も知識も足りない状況で、自分が仕事をリードしなくてはならなくなった」というものである。ひと言で言ってしまうと、「このままでは非常にマズイ!」という状況に陥っており、客観的にみるとかなり高いストレス状態に置かれていることがうかがえる。

 話を聞いた多くの方々(管理職層・経営層)の特徴として、このようなストレスにさらされた時に、人それぞれのやり方は違うものの、何とかしようと“必死に行動”していることが挙げられる。例えば、先輩や上司に頭を下げて教えを乞うという一般的なものから、社外の人に助けを求めて何とかした人、顧客に助けを求めて何とかした人、中にはライバル企業に助けを求め何とかした人まで、まさになり振り構わずという感じなのである。結果としてうまくいくか、いかないかは別として、何とかしようとする行動の“必死さ”は一緒なのである。

 そして、この必死の行動、なり振り構っていられない状況こそが、自らのその後の行動に影響を与える経験となり、行動や思考の領域を広げているようなのである。何と表現すれば良いのかとても抽象的な表現になるのだが、「人としての成長」「懐の深さ」「人としての余裕」みたいなものにつながっているように感じられる。

 このような話を多く聞いていると、人の成長の根源はストレスにあり、これらのストレスにさらされた時の個々人の行動や判断が、その人物を成長させるか否かの分岐点になっているように感じる。彼らを見ていると、一般的に言われるストレス耐性(ストレスに耐える力)とは少し違い、ストレスを受けた時にどう行動するかがポイントになっている印象を受ける。逆に言えば、ストレスには決して強くなく、ストレスから解放されるために必死に行動しているようにみえるのである。

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