コラム
» 2012年05月25日 08時00分 UPDATE

米小売店舗が目指す「アマゾンのショウルーム」からの脱却 (3/3)

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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「我々はアマゾンのショウルームにはならない」

 米ディスカウント・チェーンでウォルマートに次ぐターゲットという会社がある。店舗小売業の類にもれず、ターゲットもショウルーミングに悩まされている。今年の初め、ターゲットのCEOは、仕入先企業に公開レターを送り、その中で、「我々はアマゾンのショウルームにはならない」と宣言した。

 そのターゲットが先日、アマゾンの電子書籍リーダーKindleの取扱いを止めたのだが、これはアマゾンに対する宣戦布告であると業界では考えられている。折りしも、ターゲットはアップル商品のインストア展開を始めるので、アップルの圧力かという噂もあったのだが、大手ブックストア・チェーンのバーンズ・アンド・ノーブルの電子書籍リーダーであるヌックは依然として取扱いを続けているのだから、アマゾンのみを敵視した行為とみて間違いないだろう。

 ところで、ここで私がターゲットやその他の小売店舗に提言したいのは、ネット・ショップに腹を立てる以前に、「なぜ顧客の心が離れてしまったのか」、その根本のところを今一度考えてみてはどうかということだ。テクノロジーの活用や、ライバルへの対抗意識ミエミエの反動的行動に走る前に、「顧客に愛される店舗づくり」ができているかどうか、自問自答してみることが先決ではないか。

 ターゲットは、ワンランク上の商品を低価格で提供し、スタイリッシュで楽しい暮らし設計を支援する、というコンセプトで1990年代から2000年代の始めにかけて一世を風靡(ふうび)した企業だ。しかし、近年その店は死んでいる。店員に笑顔はなく、みな退屈そうに仕事をこなしている。レジの列は最短時間で顧客を処理するアセンブリーラインに過ぎない。そこには、「楽しいショッピング体験」「また来たいという感動」「愛着、温かみ」は微塵もない。

 顧客が自社店舗の名前を口に出したり、思い浮かべたりする時、どんな感情を抱くか。そこには、ほほえみや親しみや、仲間意識があるだろうか。それとも、不快感がこみ上げたり、心が冷たくなったりするだろうか。顧客は「人」であり、人を動かすのは「感情」であることを、店舗小売業の人たちは見つめ直さなくてはならない。

 低価格戦略、商品戦略、IT戦略など、これまでの小売業はそういった周辺のことばかりにこだわり、根本を忘れてきたように思う。いかに優れたアプリを作ったところで始まらない。むしろ、人に最も大きなインパクトを与えうるのは「人」である。ならば、テクノロジー投資よりも、人への投資が優先と考えるべきだろう。従業員が笑顔で働ける職場を作れるか、お金もうけや、競合を蹴落とすこと以外に会社の存在意義があるか、もしあるとすれば、それを本社のお偉いさんばかりではなく、店舗のフロアで働く人までもが実感しながら働ける環境を作れるか。

 突き詰めれば、顧客に愛され、社会が応援したくなる企業文化を築くということなのだが、そこに、ターゲットに限らずすべての店舗小売業の生き残りの道があると確信している。(石塚しのぶ)

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