コラム
» 2012年05月25日 08時00分 UPDATE

米小売店舗が目指す「アマゾンのショウルーム」からの脱却 (1/3)

店舗がネットショップの「ショウルーム」と化す現象に悩まされる米店舗小売業。突破口をスマホ・アプリの開発などに見出そうという動きもあるが、果たしてそこに解決策はあるのだろうか?

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。


 アマゾンを筆頭にした「ネット通販」が幅を利かせるにつれ、店舗がショウルーム化するという「ショウルーミング」(Showrooming)という言葉が米ビジネス界では頻繁に聞かれるようになった。顧客が店舗をショウルームとして利用する、つまり店舗に行っても商品を見たり触ったりするだけで購入はせず、代わりにネットに行って購入することを指す言葉だ。

 そう思っていたら、今度は「ジオ・フェンシング」(Geofencing)なんていう新語が飛び出した。「ジオ」はジオグラフィー(地理/地形)、「フェンシング」はスポーツのフェンシングではなく、囲いの意味らしい。

 意味合い的には、店舗小売業者が顧客のロケーション情報(地理情報)を利用して、店の周りにバーチャルのフェンスを築き、客寄せを図ることを指す。具体的には、店の近辺にいる顧客のスマホに販促情報を送り、集客を図るというものらしい。

 店舗小売業者にとってはショウルーミングへの対抗策であり、また、すっかり店舗小売業者の敵と化してしまったスマホを味方に付けようという必死の試みである。

 なぜ、スマホが店舗小売業者の敵かというと、現在、米生活者が店舗でのショッピングにスマホを利用する方法で最もメジャーなものが「価格比較」だからである。顧客は店舗でスマホのアプリを開き、商品のバーコードをスキャンして、ネットショップ、あるいは最寄りの店でより安いところがないか瞬時に探し当てる。店舗にとっては、競争のバトルグラウンドを「価格」に引き下げてしまう憎むべきツールなのである。

 そのスマホを「価格比較」にではなく、「顧客と店とをつなぐ導管」として、「お買い物サポートツール」として使ってもらおうというのがジオフェンシングの試みである。昨今の技術をもってすれば難しいことではないだろうし、聞いてみればなかなか便利なものではある。しかし、ここには1つ落とし穴がある。

 当然のことだが、誰彼構わずメッセージを送り付けるわけにはいかない。顧客が販促情報を受け取ることにパーミッション(許可)を与える、というのが前提である。つまり、顧客が店舗に対してすでにある程度のロイヤルティ、あるいは好意を持っていなければ始まらないのだ。

 米中西部にマイヤーというスーパーマーケット・チェーンがある。マイヤーのスマートフォン・アプリは、Webとモバイルと店舗をつなぐ、まさに最先端のお買い物サポートツールである。顧客はマイヤーのWebサイトにログインして買い物リストを作り、来店した際にスマホのアプリをオープンする。すると、店内で顧客がいる位置を読み込んで、順路をはじき出しリストを並びかえてくれる。購入履歴に基づいてクーポンが送られてきたりもする。

ah_nau1.jpg マイヤー公式Webサイト

 確かに便利は便利だが、あくまで「すでにマイヤーのお客さんである」という前提に基づいて初めて意味を持つツールだろう。このツールのために、他店で買い物をしていた人がマイヤーに乗り換える、ということはどうも考えにくい。

       1|2|3 次のページへ

Copyright (c) 2016 INSIGHT NOW! All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ