鉄道自殺は増えていない。自殺全体が増えている杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年05月25日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 私が「鉄道自殺が多いな」と感じた時期は1999年だった。当時の私はフリーライターになって3年目で、朝のNHKのテレビニュースで始まる毎日。午前6時頃と午前7時30分頃に交通情報がある。毎日のように首都高速のどこかが渋滞する一方で「首都圏の鉄道は順調です」という。よしよし、今日も鉄道は優秀だな、と思って仕事を始めていた。しかし、そのままテレビをつけっぱなしにしていると、8時過ぎにニュース速報のチャイムが鳴り、画面に「◯◯線は人身事故で運転見合わせ」と表示された。

 あるとき、ふと、このパターンがほぼ毎日続いていることに気づいた。それが印象深かったから、日記がわりに書き殴っていた自分のサイトに、こんな詩を書いた。これが1999年。

自殺に関する統計を見る

 鉄道自殺が増えたなという印象があるが、実際はどうなのか。厚生労働省に自殺の手段についてのデータがあり、警察庁に年次別自殺者数のデータがある

 自殺の手段を見ると、鉄道自殺が多いなという印象に反して、飛び込み(クルマも含む)の比率は5%未満だった。だいたい2〜4%台である。2%と4%は倍の差があるから特徴的ではあるが、どちらでも全体的には少ない部類だ。私が「鉄道自殺が多いな」と思った1999年(平成8)は確かに高めだが、2003年(平成15)までに比率は減っている。

 自殺の手段のトップは縊首(首吊り)で圧倒的多数。次いでガスや飛び降りであった。私は鉄道自殺が増えた理由について「ビルの警備強化のせいで、飛び降り志願者が飛び込み志願者にシフトしたからではないか」と考えていた。マンションはオートロックが増えたし、近年はオフィスビルも警備員を外に立たせているからだ。しかし統計的に見ると、飛び降り自殺も飛び込み自殺も比率の変動は少ない。飛び降りが減って飛び込みが増えたとは考えられない。

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