鉄道自殺は増えていない。自殺全体が増えている杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年05月25日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 私が出版社で広告営業職だった頃、担当していた雑誌の副編集長が戦車ファンだった。とてもユニークな人で、特にロシアの戦車が好き。「どうせ死ぬならロシアの戦車に轢(ひ)かれたい」と言って笑わせていた。もちろん本気で死にたいわけではなく、彼なりのブラックユーモア。愛情表現だ。「大ファンの女優と会えたら死んでもいい」みたいなたとえ話である。

 それが面白かったので、私も真似をして「どうせ死ぬなら電車に轢かれたい」なんて言っていた。しかし、それがしゃれにならなくなってきた。鉄道自殺のニュースが増えたからである。日本に住んでロシアの戦車に轢かれる機会はない。だから冗談で済むが、電車は私たちにとって身近すぎる。「電車に轢かれたい」なんて言ったら「はいどうぞ」と背中を押されかねない。

いつから鉄道自殺が目立ち始めたか

 2年前、Business Media 誠で『過去最悪! “鉄道自殺年間647件”が道連れにしているもの』という記事を中村修治氏が書いている。

 しかし2年後の今も、鉄道自殺は多い。毎朝、どこかで鉄道人身事故が起きていて、どのオフィスでも1人か2人は列車遅延の影響で遅刻していると思われる。SankeiBizに掲載された『鉄道自殺は「晴れ」の日が最多 昼は飛び込み、夜は侵入』(5月9日)によると、大阪府周辺の自殺は「晴れた日が7割、雨や雪の日は1割に満たない」「特急・急行など高速列車が約4分の3」という結果だったそうだ。

 また、5月12日には都内の某駅で男性が特急列車に飛び込んだ。報道が志願者を呼び寄せている気がするので、あえて駅名は伏せる。この駅では2011年7月に飛び込み自殺があり、はねられた人が売店に飛び込んで他の乗客を巻き込んだ。翌日も飛び込みがあり、翌週もあったと記憶している。5月12日の事故で11件目だったという。1年以内で11件は多すぎる。

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