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» 2012年05月24日 08時00分 UPDATE

遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論:世界のIT業界の動きが分かる街、バンガロールを訪れてみた (1/4)

世界のIT企業の多くが拠点を置いている、インド南部の都市バンガロール。現地でソニーに勤める武鑓行雄さんによると、「バンガロールにいれば、世界の動きが手に取るように分かる」という。

[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2012年5月18日に掲載されたコラムを、加筆修正したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。


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 インド・チェンナイからバンガロールに向かう国内線のロビーにある書店で、『ONE NIGHT @ THE CALL CENTRE』(コールセンターの一夜)という本を買った。インド人の好きそうなブルーの表紙がきれいで、私のいるIT業界に関係していそうだし、裏表紙の説明を見たらとても面白そうだった。英語の小説をバシバシ読める私ではないのだが、気が付いたらレジに運んでいた。

ah_endo2.jpg 『ONE NIGHT @ THE CALL CENTER』(Chetan Bhagat著、Paperbound刊)

 “インドの村上春樹”と言ったら違っているのかもしれないが、ベストセラー作家が書いたものだというのも気になる。それで、裏表紙にどんなことが書いてあったのかというと、だいたい次のようなことである。

 「2004年冬、私は旅をしていて夜行列車の中で若い女性と出会った。彼女は、デリーにあるコールセンターの深夜シフトで働く6人に起きたことについて話してくれた。6人は、それぞれ生活にちょっとした問題を抱えていたのだが、そこに1本の電話がかかってくる。コールセンターなので、かかってくる電話は、普段なら客からの商品やサービスに関する問い合わせである。ところが、その電話は“神”からのものだった……」

 パラパラとめくってみると、確かにガタンゴトンと揺れる音のする列車のコンパートメントのシーンから始まっていて、主人公は、その日に飲んだ4杯のコーヒーのために眠れずにいた。すると、カーテンが開いてハッとするような美しい女性が、「この番号、この席ですよねっ?」と言いながら入ってくる。さらにページをめくっていくと、簡単な手描きの図やメールとおぼしき文面も出てきて、いかにも今のインドの現代文学という感じである。

 多分、インドに詳しい人なら「ああ、あの作家のことを言っているんだね」と気付いていると思う。著者は、チェタン・バガットという1974年生まれの作家で、この小説の前作である『Five Point Someone - What not to do at IIT!』は、2010年に『3バカに乾杯!』という映画となり、インド映画としては過去最高の興行成績を収める大ヒットとなった。

 原作は何年もの間ベストセラーランキングに入り、映画大国インドで空前のヒットを飛ばした作品なので、ネットで調べると「超面白かった!」という感想もどんどん出てくる(実はさらに後で分かったのだが、日本でも2010年に1度だけ「第3回 したまちコメディ映画祭in台東」で上映されている。この際、私がフィルムを借りてきて上映会をやるか?)。

 ちなみに、原著のタイトルにある「IIT」(Indian Institutes of Technology=インド工科大学)は、1950年代以降インド各地に設立された、競争率60倍と言われるような理系の超難関大学。30年後のアジアにおける中国とのパワーバランスを考えて、ケネディ政権が支援したと言われる。これが、インド人の数学能力と相まって、シリコンバレーで起業する4人に1人がインド人と言われることになる原動力となった。

 そうした人たちが経済成長の進むインドに帰り、またインド中からIIT出身者をはじめとした優秀な人材が集まって、いまのインドのITパワーを絶大なものにしている。ちなみに、『3バカに乾杯!』と『ONE NIGHT @ CALL CENTRE』を書いたバガット自身も、IITの出身だそうだ。

 5月の初め、そんなインドのITの中心地として有名なバンガロールに出かけてきた。

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