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» 2012年05月21日 08時01分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:改正貸金業法から考える、日本人とお金の関係 (1/3)

2年前に完全施行された改正貸金業法によって、貸し出しの上限金利は20%となり、個人は年収の3分の1までしか借りられなくなった。ある意味おせっかいとも言える規制ができた背景には、日本人のお金に対する考え方があるからかもしれない。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2010年7月15日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 2年前の2010年6月18日、「改正貸金業法」が完全施行されました。2006年12月に成立した法律で、最も重要な「上限金利の引き下げ」「総量規制の導入」の適用が始まったのです。

 これにより貸し出しの上限金利は20%となり、それ以上の利子は無効で刑事罰の対象となりました。さらに個人については、年収の3分の1までしか借りられなくなりました(複数の会社から借りている場合は合算して)。総量規制の趣旨は、「返済能力を超える借金をさせてはいけない」ということです。

 これ、ものすごい“子ども扱いでおせっかい”な規制ですよね。「返済能力を超える借り入れをしてはいけない」なんて当たり前だし、そんなことをして困るのは借り手本人です。貸し手だって、返済能力を超えて貸したら戻ってこないのだから、わざわざこんなことを法律で決めなくてもいいはずです。

 では、なぜこんな規制が必要になったのでしょう?

 それは日本では“道徳や体裁”が、契約や法律より強い力を持っているからです。このため日本人は経済的に破たんしても、個人破産を極力避けようとします。そのために貸し手は、本人の返済能力を超えて貸しても、資金回収できてしまうのです。

 例えばどのように返すのでしょう。

40代男性が「返済能力を超えて借り、もう自力では返せない」場合

 田舎の70代の親が田畑を売って、子どもの借金を払う。自分の老後資金で払ってくれる場合もある(地方では、1人が自己破産すると家族全体の世間体に影響します。息子が自己破産したら“家の恥”となり、兄弟の縁談にまで悪影響が及ぶのです)。

30代の主婦が返済能力を超えて借り、もう自力では返せない。夫にも言っていない場合

 AV出演などの仕事を斡旋して、返させる。

40代男性が返済能力を超えて借り、もう自力では返せない。親も貧乏な場合

 振り込め詐欺の引き出し屋や、通帳名義、携帯名義の譲渡、さらには中国からの麻薬の運び人などの仕事を紹介し、その報酬で返済させる。もしかすると「首をくくれば、生命保険で返せるぜ」などという場合もあるのかもしれません。

 ……このように、本人の返済能力を超えて貸しても、戻ってくる手立てがあるため、貸し手はいくらでも貸せるわけです。

 もし上記の3人がみんな「返せないから自己破産する」という道を選んでいたら、業者は返済能力の範囲でしか貸さなくなるでしょう。そうすれば、年収の3分の1までしか貸してはならない、というようなお節介な法律は不要になるのです。

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