ところで、鉄道会社が沿線の人々に株を持ってもらいたい理由はなんだろうか。沿線の人と仲良くしたいから? 沿線の人々に経営に参加してもらいたいから? それもあるだろうが、本音は「浮動株の流動性を下げて経営を安定させたいから」ではないだろうか。
株式会社の株主には大きく分けて2種類ある。その会社に縁が深く、大株主として経営権を持ち、基本的に株式を売却しないタイプと、少株主で配当益や売買益を重視し、チャンスがあれば株を売却するタイプである。前者が持つ株は「特定株」「固定株」といい、後者は「浮動株」という。
株式売買の世界では、ある会社の固定株と浮動株の比率を比較して、固定株の比率が高く浮動株が少ない場合、株式市場に流通する株が少ないから、株の売買による株価の変動が大きい。逆に、浮動株のほうが多い場合は市場に株式が多く出回り、業績の評価が株価に反映されやすいといえる。
東証が公開している「銘柄別の浮動株比率」によると、大手私鉄の浮動株比率は0.6から0.85ほど。浮動株比率の最大は1.0だから、これはかなり高い数値といえる。
大株主が株を売却すれば株価は下がる可能性が高い。新たに株を大量取得する人が現れれば株価は上がるかもしれないが、取締役のメンバーが変わり、経営方針にも影響を及ぼすかもしれない。一方、少株主の売買は株価を多少変動させても、経営体制には大きく関わらない。ただし、少株主の株を誰かが買い集めれば大株主になる。浮動株の比率が高い会社は、思いがけない大株主を出現させることができる。村上ファンドの阪神電鉄株大量取得がまさにその事例だった。
ただし、浮動株はすべて売買されやすいかというと、そうでもない。株を持つ人の意思はさまざまで、どんどん売買する人もいれば、少数でも長く持とうとする人もいる。だから、浮動株の流動性は一定ではない。
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