今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
まず、次表の統計を見てほしい。中国の広電総局※がアニメーションの統計を出し始めた2003年からのものだが、当時1万2000分だったテレビアニメの制作分数が2011年には26万231分となっている。わずか9年で21倍になったのだ。中国の経済成長を思わせる、実に美しい上昇曲線である。
これはこれで実に結構なのだが、次表のように日本のテレビアニメ制作分数と比較するとかなりショッキングではある。日本は制作量だけを見ると、とっくに中国に抜かれているのだ。
2003年に中国の8倍ほどの制作量だった日本は、2006年から減少に転じ、2008年に遂に抜かれてしまい、2011年に至っては3分の1程度となってしまった。実は日本の制作分数は広告も含んだ番組単位でカウントしており(30分番組だと正味分数は24分程度)、中国は正味分数で計算しているため、実際の差はさらに大きくなる。
“アニメ王国”日本としては心穏やかならぬものがあるが、我々はこの中国の躍進を果たしてどう考えればいいのだろうか。日本のアニメ産業にとって脅威となるのか、あるいは逆に新たなビジネスチャンスとしてとらえればいいのか。今回は急成長を遂げている中国アニメーション産業の実態とその影響についてレポートしてみたい。
今から4年ほど前、遠藤誉氏の『中国動漫新人類』を読んで、中国にもオタクという存在がいるという事実を知り中国のアニメに興味を抱き始めた。自分なりに調査をしたいと考えていたところ、友人から紹介されたのが「杭州アニメーション・フェスティバル」である。中国各地で行われているアニメーション関連のフェアとしては最大規模ということもあり、情報を求めて4年前から参加している。
ちなみに杭州がある浙江省はアニメーション産業が盛んで、中国で一番の制作量を誇っている。
また浙江省の省都である杭州も都市レベルで1位となっており、アニメーション制作が盛んなことで有名だ。
杭州アニメーション・フェスティバルの正式名称は「中国国際動漫節(China International Cartoon & Animation Festival)」と言い、今年で8回目。主催は杭州市人民政府、中国動漫集団有限公司、浙江省文化庁、浙江ラジオテレビ局、中央テレビ文芸部といった7つの組織。開催期間は4月28日〜5月3日の6日間で、下記のような多彩なコンテンツを含む一大イベントである。
予算規模などは明らかにされていないが、後述する開幕式の豪華さなどを考えると、予算4億円規模の東京国際アニメフェアを大きく上回っていると考えられる。
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