ソーシャルゲームが儲かる仕組みソーシャルゲームのすごい仕組み(3)(1/4 ページ)

» 2012年05月15日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]

ソーシャルゲームのすごい仕組み

 この連載は4月10日に発売された『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)の第1章から抜粋、編集したものです。

まつもとあつし氏のプロフィール

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。DCM修士。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、ITを切り口としたコンテンツビジネスの取材・コラム執筆を行う。著書に『生き残るメディア 死ぬメディア出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)、『スマートデバイスが生む商機見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『スマート読書入門』(技術評論社)など。


 黎明期のソーシャルゲームは、携帯電話向けミニゲームに通信対戦機能が付加されたような非常にシンプルなものだった。しかし、現在のそれは、たとえばモバゲー全体では有効会員数2971万人、1日20億超の行動情報(データベースに記録されるゲーム内のさまざまな活動履歴)を扱うに至っているという。プレイヤーが目にするゲームのインタフェイスやゲームシステムはその一部に過ぎず、開発や運用リソースの多くは、データベースの設計やその解析(いわゆる「データマイニング」と呼ばれる領域だ)に割かれているといっても過言ではない。

 とはいえ、ゲーム自体の企画から開発、サービス開始(サービスイン)までの開発の流れは従来のゲームとそれほど大きな違いはない、むしろサービスインの後、ゲームが遊べるようになってから――つまりデータベースにユーザーの行動情報がたまりはじめてからが、ソーシャルゲーム運営の巧拙が問われるといえるだろう。

 実際にGREEやモバゲーのホームページや、ゲームのお知らせ画面を見ると頻繁に更新情報が掲示されているのが分かる。ユーザーを飽きさせないように、さまざまなイベントが用意され、またゲームやイベントの難易度が高すぎた場合には、修正が施され、その旨が告知されることもある。

 従来のゲームは、ゲームを開発してそれを店頭に並べ販売した後は、パッチなどと呼ばれる修正プログラムの配信以外はほぼ何もできなかった。しかしソーシャルゲームではユーザーの動静を見ながら日々刻々と修正や改良が加えることができる。それはゲーム開発を行っているというよりも、Webサービスを立ち上げて、さまざまな指標(KPI=重要業績評価指標)をにらみながら日々改良を加えているといった方がより実情に近い。

 そして、いかにユーザーにゲームで長く遊んでもらい、ゲーム内に用意した目的の達成のために「アイテム」を手に入れたくなってもらうか、が各種指標の向上、すなわちアイテム課金というもうかる仕組みを回すためには不可欠だ。そこでは次に述べるモチベーション(動機付け)をめぐるさまざまな理論が生かされることになる。

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