ユーロ離脱やむなし、ギリシャ国民の選択とは藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年05月14日 08時26分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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スペインやポルトガルが、ギリシャに続く可能性も

 結局、ドラクマに回帰したところで、ギリシャは再びデフォルトということになるだろう(実際のところ今年3月に国債を保有する金融機関との間で50%を超える減額措置があったことで、テクニカルにはデフォルトだった)。しかもEUのメンバーからも外れなければならないだろう。明確なルールはないが、EU内でメンバーとしてメリット(例えば移動の自由)を受けながら、統一通貨からだけ外れるというのは虫のいい注文に聞こえる(EUメンバーだがユーロを採用しないことは今でも可能である)。

 EUメンバーでもなくなってしまうと、EUやECBが積極的に支援する理由がなくなる。IMF(国際通貨基金)はもちろん支援することになるが、その時には、IMF管理下で現在と同じような厳しい緊縮政策を強いられるはずだ。

 今回の総選挙でも、国民はユーロから離脱することを選択したとは言えない。しかし緊縮政策は嫌だというのは、単に国の状態を理解していないとも言える。急進左派連合が一気に第2党となったのは、党首が若い(37歳)というだけではなく、「押しつけられた緊縮政策は受け入れない」と主張し続けたのが理由だ。ポピュリスト的に国民の不満を吸収したということもできるが、急進左派連合がギリシャ経済や財政を再建する具体的な方策を持っているかというとそうでもない。やや乱暴に言うと、ギリシャが抱える債務について、返済を凍結し、再交渉のテーブルに乗せると言っているだけだ。

 ギリシャが再び総選挙というようなことになると、ユーロは対ドル、対円で安くなって、結果的に円は対ドルでも高くなってしまう可能性がある。そうなれば企業の海外進出はさらに加速されるはずだ。

 もしギリシャがユーロから離脱ということになった場合、もう1つ考えておかなければならないのは、スペイン、ポルトガルなどもそれに続く可能性があるのかどうかということだろう。もちろんそうなれば、ユーロの崩壊という最悪の事態さえ想定しなければならない。それはギリシャ危機の比ではない。また欧州から目の離せない日々がつづきそうだ。

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