コラム
» 2012年05月14日 08時26分 UPDATE

藤田正美の時事日想:ユーロ離脱やむなし、ギリシャ国民の選択とは (1/2)

ギリシャ総選挙では、大方の予想通り「反緊縮派」の大勝利となった。この結果浮上してきたのが、「ギリシャのユーロ離脱やむなし」という突き放した見方である。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ギリシャ総選挙とフランス大統領選挙。欧州のみならず、世界が注目してきた2つの選挙は、大方の予想通り「反緊縮派」の大勝利となった。この結果がいろいろな反応を欧州中心に生み出している。1つは前回も触れた、緊縮ばかりでなく成長戦略も視野に入れようという政策の微調整だ。そしてもう1つは「ギリシャのユーロ離脱やむなし」という突き放した見方である。

 ギリシャは第1党から第3党まで順番に連立工作を試みたが、それぞれに失敗。大統領がさらに妥協をうながしてもまとまらない場合は、6月に再び総選挙を行うことになるのだろう。現在の情勢ではとても緊縮賛成派がまた政権を担当できるようになるとは思えない。その意味では、ECB(欧州中央銀行)の政策理事が「脅し」とも受け取れる発言をするのは理解できる。要するに、財政規律を守れないのなら、勝手に元の通貨、ドラクマに切り替えればよいというわけだ。

 ECB政策理事会のメンバーでベルギー国立銀行総裁のリュック・クーン氏は、英フィナンシャルタイムズ紙のインタビューに答えて次のようなことを言っている。

 「すべての国がクラブの会員で居続けることがベストだが、もし誰かがもうこれ以上、メンバーでいることにメリットがないと判断するなら、これも民主主義システムの一環だから退会届けを受理しなければならない」。そして「離婚はスムーズには行かない。平和的な離婚でもやはり後悔するだろう」

 しかし実際のところ、ドラクマに戻したところで、ギリシャの資金調達能力が上がるわけではないから緊縮財政は実行しなければならない。それにドラクマに切り替えるときには、また別の問題も生じるだろう。ユーロとの交換レートをどう設定し、その後の為替変動をどの程度許容するのかということだ。

 もしあまりにドラクマを安くしてしまえば、ユーロで資金調達した債務を返済することが絶望的になる。一方で、国内がハイパーインフレに陥る可能性もある。そうなれば国民の不満はもっと高まり、その混乱ぶりが国境線を越えて多国に波及するかもしれない。国民にとっては財産をドラクマで保有するかユーロで保有するかでずいぶん差が生まれてしまうだろう。金持ちはさまざまなヘッジをかけられるから、貧富の格差はドラクマ回帰でますます広がるかもしれず、そうなればまた不満の火種になりそうだ。もちろん通貨を安くすればそれなりに競争力は回復する(外国の観光客は喜んでこの機会を利用するはずだ)。

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