「経済全体が豊かになれば、底辺の人も次第に豊かになる」という考えを、ちきりんは信じていません。パイを大きくすることは大事ですが、パイの大きさは自然な配分をうながしたりはしないからです。
「日本には巨大な貧困層が存在する」という意識を共有し、少なくとも、生まれた家の財力に関わらず、子どもたちが必要な教育が受けられるだけの支援をする必要があるでしょう。
お金の再配分はある意味、簡単です。しかし「経済力がないから結婚できない」と言われても結婚の機会を強制的に再配分するのは不可能です。
個人が自分の存在意義を感じる源泉となる家族の存在や没頭できる趣味の有無など、人生に意義を与えてくれるすべてが“経済力”という要素に依存しているのが、今の日本社会の根本的な問題です。
この辺は佐藤俊樹著『不平等社会日本―さよなら総中流』で提案されていた解の方向性も参考になるでしょう。
その昔、日本の強さは(4)の人の優秀さにありました。“ラインの改善サークル”とか“アメーバ経営のセル”では、現場の人が自分で考えて提案し、柔軟に非定型な作業をこなしていたのです。
欧米では(4)の人にそんなことは期待しません。だから、(4)の人が何も考えなくても回る仕組みを作ることが、(1)の人に求められたのです。
日本企業も今は欧米型の「システムによって、何も考えない人たちを使うモデル」を採用し始めています。でも、本当にそれが優位性のあるモデルなのでしょうか。ちきりんはそれも疑問に思っています。
前線の人の強さを生かせなかった(1)の人の能力不足が、(4)の人を「何も考えずに機械のように働け!」と言われる世界に押し込めているのではないかと感じるのです。
そんじゃーね。
この記事は、『ルポ 正社員になりたい―娘・息子の悲惨な職場』『不平等社会日本―さよなら総中流』『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』の3冊の本を読んで考えたことをまとめたものです。
ちきりんさんによる新刊『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』が5月19日に発売されます。
崩壊前のソビエト連邦から東南アジア、アフリカまで、数十カ国を旅したちきりんさん。世界を旅しながら、考えたことをまとめています。ちきりんさんによる紹介エントリはこちら(「PR)世界を歩くと、ホントにいろいろ考える……」)
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
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