エリアごとに生き残れることが大事――猪瀬副知事が目指す、東京の危機管理(1/5 ページ)

» 2012年05月11日 16時14分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 東北地方を中心に、未曽有の被害となった東日本大震災。震源から数百キロ離れた東京でも震災当日には多くの帰宅困難者が生まれ、原発事故の影響で計画停電も行われた。

 東京大学地震研究所などが首都直下型地震が起こる可能性の高さを指摘する中、首都機能と1300万人の人口を抱える東京の危機管理のあり方が改めて問われている。震災を経て、東京都ではどのような体制を目指していこうとしているのか。

 東京都副知事の猪瀬直樹氏(@inosenaoki)は5月9日、日本外国特派員協会で行った講演でエリアごとに生き残り、ネットワーク型でつながっていくことの重要性を力説した。

東京都副知事の猪瀬直樹氏

東日本大震災と尖閣寄付金の関連

猪瀬 (講演前にプロフィールを)改めて紹介していただきましたが、小泉内閣で道路公団民営化に関わり、何とか成功させました。そして現在、東京都の副知事をしていますが、東京電力の改革を進めています。小泉元首相も石原慎太郎知事も、少し変人なんですね。なぜか変人の仕事を手伝う運命で、だから僕も変人ということになると思います。

 今日のニュースとしては、尖閣諸島(購入のため)の寄付金が3億円を超えました。4月27日にみずほ銀行の口座を作ったのですが、そこからまだ2週間経っていないので、ものすごいスピードだと思っています。

 (口座を作った)4月27日の1週間前に石原慎太郎知事がワシントンD.C.で、「尖閣諸島を東京都が買い取る」と発表しました。その日、石原都知事はワシントンD.C.にいたわけですが、NHKが都庁に来ました。これは石原都知事の専管事項なので、僕は何も言うつもりはありませんでした。NHKとしては、ワシントンD.C.の石原都知事の発言を映像で映した後、東京都庁の建物を下からあおって映すとかして、そして誰か(都庁に)いる人に聞かないとニュースの形にならないので、僕が「しょうがないから答えましょう」となりました。その時に、「これは寄付でやればいけるんじゃないか」と僕は思いついて、提案したわけです。これが一番平和的な解決だと。

 「なぜこれだけ寄付が集まるか」について僕なりに述べさせていただくと、日本人は戦後、国土というものの認識がほとんどなかったと思います。しかし、2011年の3.11の東日本大震災で、災害の多い国であり、この島国が1つの国土であり、そしてそこに自分たちがいるんだという新しい考え方をもう一度持ち始めたんだろうと思っています。それは決して排外主義的なものではなくて、自分たちの宿命や運命を、災害の多い国の中で感じたんだということが、尖閣諸島の寄付の集まり方にちょっと結びついていると思います。

 そこに日本の政治の不作為、何もできない政治があるということについての危機感が重なっているとも思います。それから、「原発事故を起こした東京電力という会社はいったい何なのか」という危機感も重なって今、震災から1年経った状況の中、尖閣諸島の問題で、寄付をすることで何か自分なりに何かを求めているという(ことが結びついている)か、そういう感じがしています。

 3.11で新しい情報ツールが、改めてクローズアップされました。アフリカを含めて世界中で、FacebookやTwitterが非常に注目されるようになり、日本でも3.11でかなり利用者が増えました。これは既成のメディアや組織、システムが、どこかで乗り越えなければならないということの表れだと思っています。

 3.11の夜、宮城県気仙沼市の公民館で440人が孤立していました。周りは火の海でした。公民館の屋上で60歳の障害児施設の園長のおばあさんが「火の海、助けて」とロンドンの息子にメールを打ちました。ロンドンにいた息子は、今度はTwitterで東京に送りました。その東京に送られたメッセージが僕のところに届きました。そして、すぐ東京消防がヘリを出動させて、12時間くらいのうちにその問題に解決が与えられました。(公民館には)生まれて10日目の赤ちゃんも90歳のおばあちゃんもいました。

 つまり霞が関の縦割りの組織や、もちろん東京都庁の縦割りの組織も含めて、縦割りの組織は昨日を基準にして動いています。今日どうするか、明日どうするかという時には情報(の伝達方法)を含めて新しい決断(のあり方)というものが必要になってくると思いますが、そういうことに対応できるかどうか。東京電力の事故も、恐らく同じ問題に直面して起きたんだと思います。

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