30代は人生における大きな転換期部下育成の教科書(8)(1/2 ページ)

» 2012年05月11日 07時55分 公開
[Business Media 誠]

部下育成の教科書:

この連載は書籍『部下育成の教科書』(ダイヤモンド社)から抜粋、再編集したものです

山田直人(やまだ・なおひと)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ研究員。早稲田大学理工学部経営システム工学科卒業。多数の社会人向けトレーニングプログラム開発に従事。近年では、トランジション・デザイン・モデルの開発や、研修効果を高め受講者の職場実践を促進する研究及びサービス開発に携わる。

木越智彰(きこし・ともあき)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ研究員。京都大学文学部人文学科卒業。新人・若手向けを中心とした研修サービスの開発及び、中堅中小企業向け研修サービス「リクルートラーニングクラブ」のサービスを立ち上げ、外国人従業員の受け入れ・定着支援に携わる。

本杉健(もとすぎ・たけし)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ マネージャー兼主席研究員。一橋大学社会学部卒業。専攻は組織論。自動車、電機、通信、鉄道、銀行などの業界の企業にHRMソリューションサービスを提供。現在は企業における役割転換の調査・研究に携わる。


人生はトランジションの連続

 「トランジション」という言葉は、もともと仕事に限らず人生におけるさまざまな経験や出来事を経ていくプロセスに着目した概念です。

 臨床心理学者で個人のキャリア発達理論にも大きな影響を与えてきたウィリアム・ブリッジズはその著書『トランジション』の中で、「トランジションは生きる方向を見失ってから再発見するまでのプロセスだ」と語っています。それは人生の節目で起きる変化であり、成長過程のターニング・ポイントでもあると言います。結婚や出産、転職をはじめ、子供から成人への成長過程など、人生はトランジションの連続です。

 特に30代は人生における大きなトランジションであるという指摘は、多くの人の共感を呼ぶものでしょう。仕事や家庭では人生の節目と言える変化が次々と起こり、将来への不安や人生への疑問がわく時期です。これまでの自分を見つめ、将来を思い描いたときに、「自分は果たしてこのままでいいのだろうか」「自分が本当にやりたいことはいったい何だろうか」という悩みにさいなまれる人は多いでしょう。

 本人にとって、トランジションは苦痛を伴う変化です。これまでのアイデンティティを喪失し、自分が何者かはっきりしない、どこに向かっているのか分からないという不安定な状態が続くからです。

 また、ブリッジズは、トランジションには3つの段階があり、「終わり」と「始まり」、その間に「ニュートラル・ゾーン」があるとしています。「終わり」は、自分を取り巻く環境や状況が変化する中で、うまくいっていたことがうまくいかなくなることから始まると言います。これまでの安定が崩れ、失うものに対する恐怖心がわき、不安定な状態になるのです。そして「ニュートラル・ゾーン」は喪失・空白の時期であり、喪失感や空虚感を素直に受け止め、耐える時期としています。それは暗闇を手探りで進むようなものですが、次の「始まり」に向けて必要な時間なのです。これまでの自分の「終わり」を迎えてから、これからの新しい自分の「始まり」のために、内的な再方向づけをする大切な時間だと言います。

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