投資家の言い分は、たぶんこうだ。
「リニアの意義は分かる。しかし自社建設などといわず、従来通りの枠組みにすればいい。鉄道を建設する鉄建・運輸機構が作り、その線路をレンタルして運行すれば、売り上げからレンタル費を差し引いた利益を会計年度単位で確定できる。そこから配当が行われるから、株価も安定する」
しかし、こうした目先の数パーセントの利益にこだわる行動が、日本経済を逼塞(ひっそく)させ、夢や希望をなくしてしまったとはいえないか。特に機関投資家は単年度で実績を証明しなくてはいけない。夢だの希望だの、未来への投資だのと悠長なことを言っていられない。なぜなら、株を売り買いしている投資家たちは、本来の意味での「投資家」ではなく、資産家からオカネを預っている「金融屋」と言っていいだろう。
株式会社は本来、その会社の事業に賛同した資産家たちが資金を出し、彼らが託した経営者によって運営される組織である。この「事業に賛同し出資」の部分で、企業は長期的な事業計画を立てた。日本が開国し、経済成長を遂げる過程において、1年間で投資から回収までできる事業などは少なかった。だから「事業に賛同して投資する人々」は、投資家と言うよりも篤志家だったかもしれない。
少し厳しい言い方になるが、現在の株式市場の主役は事業よりも利回りを重視する。なぜなら、この主役たちは自分のオカネを持っていないからだ。他人のオカネを預っているにすぎない。お金を預けてくれた人に対して、単年度でどれだけ資産が増えたかをレポートする義務がある。そのために株式売買の統計に基づいたコンピュータシステムを使う場合も多いという。そこには事業の崇高な目的や、国家が世界と戦う技術の大切さなどはあまり加味されない。そんなものは数値化できないからだ。
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