連載
» 2012年05月10日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:乾電池不要のリモコンカーを創ろう――タカラトミー「EDASH」に見る商品開発の本質 (1/2)

東日本大震災の被災地におもちゃを送ろう。そのとき、ふと気がついた。「これ乾電池がいるんじゃない?」

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 東日本大震災の発生後、生きること、食べること、住むこと、働くことの順序で復興が進んだが、子どもたちにはひとつ切実な問題があった。「いかに遊ぶか?」である。

 家もおもちゃも流された。持ち出したくても帰宅できなくなった。外に出るなと言われた地域もあった。狭い避難所暮らしでは大した遊びもできない。ゲームで遊ぼうにも、あるものが手に入らなかった。それは「乾電池」である。

乾電池のいらないおもちゃを創ろう

 「あの時期、街中から乾電池がなくなりましたよね。おもちゃを送っても被災地の子どもたちは遊べない。そこにもどかしさを感じました」

 こう語るのはタカラトミーの山本拓也さん(グローバルビークル事業本部 グローバルビークル先行企画グループ主任)。同社は震災直後に義援金を寄付し、さらに避難所の子どもたちにおもちゃを送ろうとした。各部署からおもちゃをピックアップしたとき、「これ乾電池がいるんじゃない?」と気付いた。

 山本さんは同僚の松野仁美さんとともに、「いつでもどこでも場所を選ばず、乾電池不要で遊ぶことのできるおもちゃ」の開発に取り組んだ。そして生まれたのが“手動発電・操縦 赤外線RCカー”をうたう「EDASH(イーダッシュ)」シリーズ(2012年7月19日発売予定)だ。

郷好文 「EDASH」と「ぐるぐるドライブ」価格は4179円(出典:タカラトミー)

 「EDASHは、震災後から『乾電池を使わない乗り物』の構想を出し合い、技術的なトライを重ねて、さらに社会トレンドも見つつ……と、結局1年数カ月かかりました」と山本さんは言う。

郷好文 EDASHを走らせる山本さん(左)と松野さん

こだわりとアイデアがいっぱい

 努力が実ったEDASHにはヒットの予感がする。乾電池不要、手動発電、赤外線操縦……と話題は尽きず、走らせても楽しいからだ。

 まず、ハンドルの付いたコントローラーからケーブルを取り出しRC(リモートコントロール)カーにつなぐ。ハンドルを回すと内部の発電機が作動して、クルマに電気が溜まる。痛快なのはチャージするにつれてメーターがゼロからMAXへ動くところ。本物の“充電スタンド”ぽいのだ。アナログ感もたまらない。約60秒で充電完了。

郷好文郷好文 ハンドルを回して充電するアナログ感がたまらない

 走らせてみれば、小気味よいキビキビさにびっくり。コントローラーのハンドルを前に回すと前進、後ろに回すと後退。ゆっくり回すとゆっくり、速く回すとスピードが上がる。止めるとピタッと停車。2つの青いボタンで右にも左にも曲がる。

 正直これはハマる。運転ヘタの筆者は崖から転落してしまったが……。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ